研究課題/領域番号 |
18K04817
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
森 康維 同志社大学, 理工学部, 教授 (60127149)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 化学工学 / ナノ材料 / 分離・分級 / 微粒子集積 / 表面・界面特性 / 貧溶媒添加法 / 薄膜作製プロセス / 電気泳動堆積法 |
研究実績の概要 |
直径10 nm以下の半導体ナノ粒子は,量子ドット(QD)と呼ばれ,特異な光学特性を持つことが知られている。この光学特性を向上させるには粒子径分布の狭いQD試料が必要で,工業的な規模でこのような試料を得るために,貧溶媒添加法(SSP;Size Selective Precipitation)が適用できる。サイズの揃ったQD懸濁液から,高密度粒子配列膜を作製する方法として,本研究では電気泳動堆積法(EPD)を検討し,特に規則配列膜を作製する操作方法を見出す。 半導体ナノ粒子としてInP/ZnSコア・シェルナノ粒子(InP/ZnS CS QD)を取り上げる。このCS QDは,ZnSシェルがInPコアを不働態化するため発光特性が向上する。今年度は,水分散系のInP/ZnS CS QDの合成方法を検討し,SSP操作の有用性を検討した。ZnSをシェルとするときに用いる紫外線の波長により,コアのInPの特性も変化し,CS QDとしての光学特性が異なることを見出した。得られた試料に洗浄工程を導入した後,SSP操作を行うと,分級されたCS QDは凝集することなく,蛍光強度が増大し,ピーク波長のシフトも観察されたことから,SSP操作の有用性が確認できた. 銅,亜鉛,スズ,硫黄の4元素系半導体であるCZTS QDは新しい太陽電池用材料として注目されている。このQDを塗布・配列する手法を開発するため,基板となるITOガラスの表面処理法を検討した。中性洗剤,アセトン,2-プロパノールおよび超純水で洗浄後,表面プラズマ処理をすると,水にも有機溶媒にも濡れやすい基板を用意することができた。スピンコーターを用いてCZTS QDの堆積薄膜を基板上に作製し,電子顕微鏡や原子間力顕微鏡を用いてその表面粗さを観察し,処理操作の有用性を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
貧溶媒添加法(SSP)に関する検討として,半導体ナノ粒子の一つである硫化亜鉛(ZnS)QDを取り上げ,SSP操作の有用性を学術会議で発表することができた。口頭発表:33rd Conference of the European Colloid and Interface Society, Leuven (Belgium), 2019年9月。 粒子集積薄膜の作製方法として取り上げた電気泳動法では,昨年度の結果をまとめて,薄膜の空隙率評価や堆積量の推定に関する研究成果の一部を学術会議で発表することができた。口頭発表:The 12th European Congress of Chemical Engineering, Florence (Italy), 2019年9月。 電場の変化する電気泳動法では,特異な配列の粒子堆積膜を作製できることを学術会議で発表した。口頭発表:Okinawa Colloids 2019, 名護,2019年11月,および化学工学会,姫路大会2019,姫路,2019年12月。 さらに本課題に関連する基礎研究の成果として,固体表面と粒子との相互作用に関する口頭発表(化学工学会,姫路大会2019,姫路,2019年12月)も行った。
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今後の研究の推進方策 |
貧溶媒添加法(SSP)に関しては,InPをコアに,ZnSをシェルにしたコア・シェルQDに対してSSP操作で蛍光特性の優れた材料創製法を確立する。さらにチオール類で表面修飾されたZnS QDを種々の溶媒に分散させ,その分散状態の変化をInstitute of Particle Technology, Friedrich-Alexander-University Erlangen-Nurnberg(FAU)あるいはUniversity Duisburg-Essen(UDE)所有の測定装置を用いて測定し,Hansen Solubility/Dispersibility ParameterからZnS QDの溶解度パラメーターを推定する。しかしながら,新型コロナウイルスの影響で,海外出張の可能性が低く,国内で文献等を用いた検討や,経験値を用いて溶解度パラメーターを推定することを同時並行で実施し,ZnS QDの分散凝集現象が説明可能であることを立証する。 粒子集積薄膜の作製方法として電気泳動堆積法を採用し,スピンコート法と比較しながら,直径数100 nmの無機粒子を用いて規則配列膜を作製すると共に,QDの均質な集積薄膜の調製を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度検討する予定であったFAUあるいはUDE所有の装置を用いてHansen Solubility/Dispersibility Parameterの測定を次年度に延期したため,予算の一部を繰り越した。しかしながら,新型コロナウイルスの影響で,海外出張の可能性が低く,国内で文献等を用いた検討や,経験値を用いた溶解度パラメーターの推定を同時並行で進め,ZnS QDの分散凝集現象が説明可能であることを立証する。 粒子集積薄膜の作製方法として電気泳動堆積法を採用し,スピンコート法と比較しながら,直径数100 nmの無機粒子を用いて規則配列膜を作製すると共に,QDの均質な集積薄膜の調製を検討する。
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