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2019 年度 実施状況報告書

鉄鋼精錬プロセスにおける音響学的診断による浴内粒子分散挙動の予測のための基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K04818
研究機関摂南大学

研究代表者

植田 芳昭  摂南大学, 理工学部, 准教授 (00599342)

研究分担者 中嶋 智也  大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80207787)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード鉄鋼精錬プロセス
研究実績の概要

溶銑予備処理工程におけるインジェクション法では,不活性ガスとともに脱硫剤などの粒子群を吹き込むが,溶銑との濡れ性は悪いため,吹き込まれた粒子はガスと溶銑の界面を貫通し溶銑内に侵入する際に気体を纏ってしまい,それによる浮力が浴内での分散を阻害してしまう.溶銑は不透明であることから,浴内での粒子群の分散挙動を直接観察によって評価することはできない.本研究では,浴内に投入される粒子がガスと溶銑の界面を貫通する際に形成する気柱(キャビティと呼ぶ)が分裂・崩壊するときに発する放射音に着目し,その音響特性から粒子の浴内分散挙動を音響学的に診断する手法の開発を目指している.
物体が水没したとき,ポチャンと音を発するが,本研究はこの音を発生源について検討するものである.撥水性表面を持つ球が水没するとき,水没時に生成された水膜が球表面から剥がれるため,水没後,球背後にキャビティが形成される.このキャビティが崩壊するとき,放射音が発せられる.一方,親水性表面を持つ球が水没するとき,水没時に生成される水膜は球表面から剥がれないため,水没後,球背後にはキャビティが形成されない(ただし,水面への侵入速度が閾値を超えた場合には,キャビティが形成される).そのため,濡れ性の良い球が水没するときは,ほぼ無音で水没する.
本年度は,昨年度構築した,単一の水没球がその背後に形成するキャビティの崩壊と,それに伴って発生する放射音の計測システムを用いて,キャビティ崩壊時の曲率半径と放射音の周波数の関係について調べた.水没球の比重が大きくなるほど,水没後の減速度が小さくなり,それによってキャビティ崩壊時の曲率半径は小さく,水没球に付着する残留気泡の体積は大きくなる.このことが水没する球が発する放射音の音圧スペクトルに影響を及ぼしていることを確認した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

放射音の測定には,室内音による影響だけでなく,容器壁での反射音による影響等,様々な外乱を軽減できるよう実験装置を構成しなくてはならず,この点を慎重に行う必要がある.さらに,球体が水没した後,キャビティが崩壊するまでの時間は数ミリ秒であることから,マイクロ秒のオーダでカメラとマイクの同期計測を行わなくてはならない.これらの同期計測システムは,初年度,構築できた.
本年度は,この同期計測システムを用いて,撥水性表面を持つ単一の球体が水没するときに形成するキャビティの崩壊と,それに伴って発生する放射音について,キャビティ崩壊時の曲率半径と放射音の周波数特性について調べた.実験に用いた球体は,水に近い比重を持つポリアセタール球,比重約1.2のアクリル球,比重2.7のアルミニウム球である.それら比重の異なる球体を種々な水没速度で水没させる実験を行った結果,キャビティ崩壊時の曲率半径および球体への付着気泡の体積は,水没後の球の減速度に依存し,発せられる放射音の周波数特性に影響を及ぼすことを確認した.
この放射音の音圧特性について検討するためには,水側の圧力場の情報が必要となった.今後,キャビティ崩壊時におけるPIVによる流れ場の可視化実験からの情報をもとに,圧力場を推算することにより,放射音の発生メカニズムの解明に繋げるつもりである.

今後の研究の推進方策

撥水性表面を持つ球が水没したときに発する放射音の発生メカニズムを明らかにするためには,キャビティが崩壊する瞬間における水側の圧力場も必要となることが判明した.そこで,粒子画像流速計(PIV)を用いた可視化計測を行い,キャビティ崩壊時の流れ場の情報から推算される圧力をもとに,キャビティ崩壊における放射音の発生メカニズムを明らかにしたいと考えている.
キャビティ形状と放射音の音圧スペクトルの相関が明らかとなれば,溶銑予備処理工程における粒子群の浴内分散挙動を非接触・非視認で音響学的に把握する
ための基礎技術となりうると期待している.

次年度使用額が生じた理由

これまでの研究を通して,撥水性表面を持つ水没球が形成するキャビティが崩壊するときに発生られる放射音のメカニズムを解明するためには,キャビティ崩壊時における水側の圧力場の情報が必要となった.圧力場の情報は,PIV計測によって得られる瞬時の速度場の計測結果からの推定値として見積もる予定である.
そのために,今年度は昨年度の繰越金と今年度分の予算を合わせて,本実験で行うPIV計測に適した高速度カメラの購入を考えている.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Visualization of an intermittent splash with a gas blowing from a top lance ~Breakup of cavity surface making a splash~2020

    • 著者名/発表者名
      Shingo SATO, Jun OKADA, Yoshiaki UEDA and Manabu IGUCHI
    • 雑誌名

      ISIJ International

      巻: 60 ページ: 掲載予定

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Prediction of plunging depth induced by top lance gas blowing onto a low-melting-point metal bath2019

    • 著者名/発表者名
      Shingo SATO, Makoto ANDO, Jun OKADA, Yoshiaki UEDA and Manabu IGUCHI
    • 雑誌名

      ISIJ International

      巻: 105 ページ: 10-19

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Computational mixing-time of self-induced rotary sloshing caused by an upward liquid jet in a cylindrical container2019

    • 著者名/発表者名
      Yoshiaki Ueda and Manabu Iguchi
    • 雑誌名

      日本実験力学会論文集

      巻: 19 ページ: 40-46

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 連続精錬プロセスに関する基礎的研究(貫入噴流による気泡巻き込み量)2019

    • 著者名/発表者名
      明田真矢,秋元悠希,植田芳昭,井口学
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会・日本金属学会関西支部鉄鋼プロセス研究会・材料化学研究会 令和元年度合同講演会
  • [学会発表] Design of a modified raceway pond based on experimental flow visualization2019

    • 著者名/発表者名
      Ryunosuke Osaka, Yoshiaki Ueda and Yusuke Sakai
    • 学会等名
      AlgaeEurope 2019 International Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 上吹きランスによるガスジェットの低融点金属浴への貫入深さの予測2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤新吾,安藤誠,岡田淳,中井由枝,植田芳昭,井口学
    • 学会等名
      日本学術振興会 製鋼第19委員会 反応プロセス研究会第80回会議
  • [学会発表] 上吹き条件がスピッティング発生現象に与える影響2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤新吾,久保典子,植田芳昭,井口学
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会第178回秋季講演大会
  • [学会発表] Experimental measurement of particle sedimentaion in modified raceway ponds2019

    • 著者名/発表者名
      Ryunosuke Osaka, Yoshiaki Ueda and Yusuke Sakai
    • 学会等名
      Asian Pacific Confederation of Chemical Engineering
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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