研究課題/領域番号 |
18K04819
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
早坂 良 和歌山工業高等専門学校, 知能機械工学科, 准教授 (20593057)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 粒子シミュレーション / 薄膜形成 / 磁性ナノ粒子 / 自己組織化 / 移動現象および単位操作関連 / 外部磁場 / 磁気記録材料 / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
磁性ナノ粒子の薄膜生成と秩序配列構造の制御は電子材料の分野で極めて重要な技術であり,とりわけ磁気記録材料のさらなる大容量化を実現するためには必要不可欠である.しかしながら,従来の薄膜生成技術ではナノサイズの粒子の構造を制御するのは困難である. そこで本研究では薄膜を生成する新しい技術である『磁気溶液堆積法』の基礎の確立を目指す.具体的には溶液中で粒子を沈降させることにより,磁場と溶液の温度をコントロールして,所望の薄膜を得るための方法と条件を,粒子シミュレーションによって明らかにする.方法と条件の着眼点として,1.強力な外部磁場印加による薄膜生成に与える影響,2.大容量化の限界点,3.液体の温度変化の影響,4.秩序配列構造を得るための条件および生成時間の解明があり,当該年度は「2.大容量化の限界点」を前年度以上に詳細に解析した. 前年度は平均粒子間距離が1.9(濃度25.1%)のときは薄膜が形成されたが,1.5(濃度40.3%)のときは薄膜が全く形成されないという結果が得られた.そこで当該年度は,薄膜が形成される限界の面積分率である最大面積分率点を算出するため計算アルゴリズムを開発した.計算アルゴリズムは各粒子の座標からクラスタ形成を検知し,クラスタが形成されると粒子の投与を停止させ,クラスタが崩壊すると再び粒子を投与する.以降このアルゴリズムを『粒子投与知能化アルゴリズム』と称する. その結果,印加磁場を強くすることによって濃度24.3%まで上昇するが印加磁場による効果はこの濃度までで,それ以上の濃度を得るためには溶液の温度の制御が重要になることが明確になった.最終的に磁気溶液堆積法によって得られる最大面積分率点は濃度32.2%という重要な定数が得られた.しかしながら,新型コロナウィルスの蔓延により研究成果の公表機会が激減したので、まだ行えていないのが現状である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度は平均粒子間距離が1.9(濃度25.1%)のときは薄膜が形成されたが,1.5(濃度40.3%)のときは薄膜が全く形成されないという結果が得られた.この結果から距離1.9と1.5の間に大容量化の限界点が存在するという重要な知見が得られた. そこで本年度は,薄膜が形成される限界の面積分率である最大面積分率点を算出するため『粒子投与知能化アルゴリズム』を開発した. その結果,得られた最大面積分率点は濃度32.2%という値は,工学的にも科学的にも重要な定数が得られた.本定数は本研究の枠を超えた結果になると推定される. しかしながら,新型コロナウィルスの蔓延により研究成果を公表する機会が激減したことにより,公表には至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,研究実績の概要で示した方法と条件の着眼点のうち, 4.秩序配列構造を得るための条件および生成時間の解明を順次予定通り進める.また,令和3年度の研究結果は本研究の枠を超え,科学的にも工学的にも極めて重要であるため幅広く公表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は新型コロナウィルス蔓延のため研究成果公表の機会の有無が不透明であったため参加を見合わせるケースが多かった.よって,研究推進に注力し人件費を活用し,科学的にも工学的にも重要な研究結果を得た.令和4年度は日常生活が戻る兆候がみられ,学会活動も活発になっているので、今後はそれらの学会での研究成果の公表や,投稿論文での公表にて積極的な使用が見込まれる。
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