研究課題/領域番号 |
18K04820
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩村 振一郎 北海道大学, 工学研究院, 助教 (10706873)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 反応プロセス / ナノ材料 / エネルギーデバイス / 炭素材料 / 化学気相成長法 / 光触媒 / ナノ粒子担持 |
研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者らが開発した減圧液パルス化学気相蒸着(VLP-CVD)法を活用して、電極材料や触媒に向けたナノ複合材料を簡便に製造することである。研究代表者らのこれまでの研究により細孔径の大きな多孔質炭素材料中にTiO2ナノ粒子を均一に担持することに成功し、電極材料としての優れた特性が得られることを明らかとしている。R元年度の検討により担体粒子内部の拡散距離を短くすることにより、マクロポーラスな担体だけではなく、メソポーラスな担体にもTiO2ナノ粒子を均一に担持することに成功し、高い光触媒活性を得ることが可能になった。そこで、令和元年では、原料の利用効率の向上および、使用できる原料溶液の多様化に向けて、実験装置の改良に取り組んだ。 これまでVLP-CVD法に用いていた実験装置では大気圧下にある液体の原料と減圧状態の反応管の間の圧力差を推進力として、接続したバルブの開閉時間により導入量を制御していた。この方式では50μL/pulse未満の導入量を精度良く制御することが困難であるという問題が生じていたため、導入機構をプランジャーポンプに変更することで10μL/pulseの導入量まで正確に制御することに成功した。また、反応温度の制御に用いていた電気炉の種類を実験条件により最適な加熱方式に選択できるようにすることで、TiO2の担持に最適な温度を高精度で制御することを可能にした。 これら新規実験装置を用いることで、TiO2源であるチタニウムテトライソプロポキシドの導入量を減らした検討を行った。この結果、導入量をこれまでの50μL/pulseから10μL/pulseに減らした場合でも、従来の約60%のTiO2が担持していた。この場合の原料の利用率は約14%と、気相反応としては非常に高効率な担持を行う事に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では反応管内の原料ガスの圧力を制御する新規気相プロセスを開発することを目的としている。このプロセスでは原料の導入量や反応温度は、ナノ粒子の担持効率に影響を与えるだけではなく、担持状態にも影響を与える、非常に重要な要素である。本年度は実験装置の改良によりこれら重要な要素の制御性を向上することを可能にしたことから非常重要な進捗であると判断できる。また、この改良した実験装置を用いることで令和2年度に検討を進める予定であるSnO2やV2O5などの担持に用いる非常に反応性の高く、微小量の導入が求められる原料を用いた検討も円滑に進めることができることが期待される。以上のことから、今年度の進捗状況として「おおむね順調に進行している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の成果より、VLP-CVD法に用いる実験装置の実験条件の制御性が向上し、原料溶液の物性の影響が少なく、微小量の正確な導入が可能となった。そこで、R元年度はVLP-CVD法による様々なナノ複合材料製造の可能性を検証するために、TiO2以外の金属酸化物の担持を検討する。新たに検討する金属酸化物としては、CVD原料として液パルス状に導入可能な金属アルコキシドを購入可能なSnO2やV2O5などを予定している。これらの原料物質であるアルコキシドはチタンアルコキシドと比べ反応性が高いため、微小量を正確に反応管に導入することが重要になる。新規実験装置を用いて、導入条件や反応条件の最適化を図り、これらのナノ粒子の担持状態の制御を目指す。また、得られた材料についての電極特性や触媒活性などの応用評価も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究ではナノ複合材料製造に必要な実験装置を新たに開発すること前提に予算を計上していた。H30年度は様々な細孔構造の担体を活用することに向けた検討に注力し、R元年度に新たな実験装置の製作を本格的に進めた。R2年度に繰り越した予算も引き続き新規実験装置を用いた検討を進めるとともに、得られた成果を国内外の学会で発表をする旅費等に使用する予定である。
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