研究課題/領域番号 |
18K04822
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田巻 孝敬 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (80567438)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオ燃料電池 / メディエータ / 酵素 / 材料システム設計 / アントラセン二量体 / 表面修飾 / 酵素固定法 / カーボンブラック |
研究実績の概要 |
バイオ燃料電池は、触媒として酵素を用いることで、グルコースなどの生体に安全・安心な燃料が利用できるため、医療用補助具や携帯機器のポータブル電源として開発が期待されている。本研究では、バイオ燃料電池の電極表面構造について検討を行い、酵素が有する高い反応速度を活用して高電流密度化を実現する。従来の酵素電極における主要課題として、酵素-電極間で電子授受を行うメディエータを電極表面に高密度かつ安定に固定化できないことが挙げられる。 昨年度の研究では、カーボン表面に強く吸着するアントラセン二量体とメディエータの複合化により、高密度かつ安定なメディエータの固定が可能であることを示した。本年度は、アントラセン二量体を用いたカーボン表面への酵素の固定化について検討を行った。酵素はカーボン表面への物理吸着により変性・失活し、低電流密度の要因の一つとなっていた。はじめに、アントラセン二量体と親水ユニットの複合体を合成し、酵素の物理吸着の抑制を図った。カーボンブラック(CB)へ酵素Glucose oxidase (GOx)の吸着試験を行った結果、未修飾CBと比較して親水ユニット複合化アントラセン二量体により修飾したCBでは酵素吸着が抑制された。続いて、親水ユニットへ酵素を化学的に固定化する酵素固定ユニットを導入した。酵素吸着試験の結果、酵素吸着量は酵素固定ユニット導入前と比較して約3倍に増加した。また、CBへ吸着した酵素の比活性[U/mg_GOx]は、酵素固定ユニット修飾CBで未修飾CBの約4倍に増加した。CBあたりの酵素吸着量と吸着酵素の比活性の積であるCB重量あたりの吸着酵素活性値[U/mg_CB]は、酵素固定ユニット修飾CBで未修飾CBの約2倍となった。以上より、アントラセン二量体を用いることで、酵素の活性状態を維持したままCB表面へ高密度固定する手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新規な化合物であるアントラセン二量体と親水ユニット・酵素固定ユニットの複合体を合成し、アントラセン二量体との複合化により酵素の活性状態を維持したままCB表面へ高密度固定する手法を開発することができたため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
メディエータおよび酵素を固定した酵素電極における高電流密度を実現するために、メディエータの固定化構造についてさらなる検討を行う。薄層電極で十分な電流密度が得られた段階で、厚膜化による高電流密度化についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に予定されていた化学工学会第85年会で成果発表を行うために、参加費・旅費として支出する予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により会場での発表が中止(ただし、要旨集記載の範囲において研究発表としては成立)となり、参加費の一部が返金され、旅費の支出もなくなった。年度末であったために未使用額は2019年度に執行せず、翌年度分と合わせて、実験で使用する試薬・ガラス器具等を購入する物品費に使用する予定である。
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