研究課題/領域番号 |
18K04825
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長嶺 信輔 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30335583)
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研究分担者 |
引間 悠太 京都大学, 工学研究科, 助教 (50721362)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光触媒 / マイクロリアクター / グラファイト型窒化炭素 / 酸化鉄 |
研究実績の概要 |
申請者らは光触媒を金属基板に固定化した光化学ダイオードにより酸化/還元場を異なる流路に分割した光触媒マイクロリアクターを開発している。光触媒側流路への光照射により正孔と電子が生成し,電子が金属板を経由してもう一方の流路に移動し,光触媒側流路で正孔による酸化反応,金属側流路で電子による還元反応が進行することを実証している。本研究ではエネルギー準位の異なる可視光応答性光触媒マイクロリアクターを2基連結し,その間でレドックスメディエーターを循環させることで,酸化/還元を異なるリアクターに分担させる2段階光励起反応システムの開発を目的としている。 令和元年度は可視光応答性光触媒として酸化鉄(Fe2O3)およびグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)を用いた酸化/還元場分割型光触媒マイクロリアクターについて検討を行った。Fe2O3を用いた系では,光触媒側への可視光照射により金属側での鉄(III)イオンの還元反応が進行することを確認した。また,結晶構造の異なるα型,γ型のFe2O3についてリアクターの性能を比較し,電気伝導度に優れるγ-Fe2O3の方が本研究のマイクロリアクターにより適していることを明らかにした。 g-C3N4については,g-C3N4粒子間および粒子-金属基板間の接着性が低いため固定化が困難であった。そこでg-C3N4粒子に金ナノ粒子を担持した結果,接着性が向上し金属基板への固定化が可能となった。このg-C3N4固定化基板を酸化/還元場分割型光触媒マイクロリアクターに用いたところ,光触媒側への可視光照射により金属側での還元反応が進行を確認できたものの,反応率,安定性に改良の必要性があることが示された。 以上の研究結果は化学工学会姫路大会2019,および化学工学会第85年会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度には2段階光励起反応システムの光触媒の候補としてFe2O3,g-C3N4に着目し,酸化/還元場分割型光触媒マイクロリアクターへの利用について検討を行った。酸化用リアクターの光触媒の候補であるFe2O3については,有機物の酸化とレドックスメディエータである鉄イオンの還元が可能であることを示した。一方,還元用リアクターの光触媒であるg-C3N4については,基板への固定化,反応の安定性に難点があり,目的である金属側流路での有機物の還元反応に性能を発揮できていない。以上より,進捗は当初予定よりもやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
g-C3N4を用いた酸化/還元場分割型マイクロリアクターを作製し,鉄イオンの酸化とp-ニトロフェノールの還元を実施する。g-C3N4の基板との接着性の向上,および流路間の電荷移動の促進を目的とし,g-C2N4のポリドーパミンとの複合化を試みる。並行して,g-C3N4固定化基板の還元性能を評価するために,バッチ型の酸化/還元場分割型反応器を用い,流通型マイクロリアクターでは困難な水素,メタン等の気体の生成反応についても検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
進展状況で述べたとおり,研究の進捗がやや遅れているため,予定していた試薬,消耗品等の購入に至らなかったためである。次年度の装置作製,実験に必要な物品の購入に充てる予定である。
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