申請者らは光触媒を金属基板に固定化した光化学ダイオードにより酸化/還元場を異なる流路に分割した光触媒マイクロリアクターを開発している。光触媒側流路への光照射により正孔と電子が生成し,電子が金属板を経由してもう一方の流路に移動し,光触媒側流路で正孔による酸化反応,金属側流路で電子による還元反応が進行することを実証している。本研究ではエネルギー準位の異なる可視光応答性光触媒マイクロリアクターを2基連結し,その間でレドックスメディエーターを循環させることで,酸化/還元を異なるリアクターに分担させる2段階光励起反応システムの開発を目的としている。 令和2年度は,前年検討したAu担持グラファイト状窒化炭素(g-C3N4)をチタン板に固定化した基板を用い,反応場を2槽に分割したバッチ式反応器において酸化側セルで塩化鉄(Ⅱ)の酸化,還元側セルでp-ニトロフェノールのアミノ化を実施した。塩化鉄(Ⅱ)の酸化は24 hの光照射でほぼ完全に進行した。一方, p-ニトロフェノールの還元反応の進行も見られたが,反応率は3%程度であり,酸化側セルで生成した電子の大半が還元側セルでの反応に使用されていないことが確認された。これはチタン板の体積が大きく生成した電子がチタン板に蓄電されているためであると推測される。そこで,導電部の体積を低減する目的でFTOコーティングガラス板を用いたg-C3N4固定化基板を用い,同様にバッチ式反応器での光触媒反応を実施したところ,p-ニトロフェノールの還元反応率を10%程度まで向上させることができた。以上の結果より,光触媒を固定化したFTOガラス基板を用い,鉄イオンをレドックスメディエータとして2段階光励起反応システムを構築できる可能性が見いだされた。
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