再生可能資源のバイオマスからの発電を、熱機関を利用した従来の発電方法で行うと効率が10~30 %程度と著しく低い。本研究では、バイオマスの化学エネルギーを熱エネルギーではなく適切な別の化学エネルギーに変換することでエクセルギーの損失を抑え、さらにその化学エネルギーを電気エネルギーに変換する新規発電方法を提案している。具体的には、レドックスフロー電池にも用いられるバナジウム化合物をバイオマスにより還元し、還元物を電気化学的に酸化する過程で電力を取り出す。提案法の理論発電効率は80 %以上と見積もることができ、電気化学反応等の効率を考慮したうえで期待できる50 %以上の高効率を目指している。 提案するプロセスは「化学エネルギー変換」と「電気化学的変換」で構成されるが、提案法実現の鍵となる「化学エネルギー変換」反応が、150~250 ℃という、バイオマス発電プロセスとしては比較的低温で進行することを明らかにした。比較のため、各種石炭を用いた反応実験も実施したが、バイオマスの反応性は石炭よりも高いことがわかった。反応速度に及ぼす固体反応率、ならびに反応原料の濃度の影響を詳細に調べ、反応速度式を定式化した。反応にともなう反応界面積の変化はグレインモデルに従うとし、反応物のVO2+、H+と生成物のV3+の固体への吸着を考慮することによって、実験結果を良好に再現できる反応速度式を決定することができた。得られた反応速度式を利用して、反応器の大きさを見積もったところ、発電容量規模が同じボイラーのサイズと同等となり、本反応プロセスの実現性が示された。
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