研究課題/領域番号 |
18K04828
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤岡 沙都子 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (50571361)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 液液スラグ流 / 圧力損失 / 微粒子合成 |
研究実績の概要 |
前年度はスラグ形状の推算式を提案した。今年度は計画通り界面のフォースバランスに関する理論的検討および圧力損失推算の半理論的解析を行ったが、種々の条件による圧力損失測定は機器調整の遅れによりこれから実施する予定である。 また、形成させたスラグ形状の違いがスラグ内部流体の混合に及ぼす影響を実験的に明らかにするため、呈色反応を利用した可視化実験により混合度の定量化を試みた。その結果、スラグ長さがスラグの内部循環流による混合促進効果の度合いに影響を及ぼす可能性が示唆された。今後、実験系の改善を行い解析の精度を上げるとともに操作条件の範囲を広げ、引き続き検討を行う予定である。実験ではスラグ形状と混合促進との関係を明らかにする予定であり、内部流動の詳細を今後CFDにより解析し比較したい。 さらに、並行してシリカ合成をモデル系として微粒子合成実験を行なった。単相流に比べ液液スラグ流のほうが生成粒子の単分散性が向上し優位であることは前年度に確認済みであるが、本年度は解析精度の向上のため生成粒子径の測定方法を見直し、SEMによる画像解析からレーザー回折散乱式の粒度分布測定装置を利用した湿式での測定に変更した。測定系の調整の後、液液スラグ流を形成させる2流体の体積流量比を変化させ、生成粒子径に及ぼす影響を調べた。その結果、スラグ速度を一定とするとスラグ長さの増大に伴い平均粒子径が減少し、粒子径の分散が増加する傾向が見られた。スラグ長さの増大により内部循環流による混合性能が低下する可能性が示唆された。呈色反応を利用した混合の可視化実験と比較しながら引き続き解析を行い、単分散な微粒子を生成するのに適したスラグ形状およびそのための操作条件を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はSEMによる生成粒子の観察およびサイズ測定を行なっており乾燥条件の調整の難しさが課題であったが、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置による湿式での測定を可能にしたため、粒子合成実験における困難を解決できた。測定系の調整に時間を要したが、今後は実験にかかる時間の短縮と精度の向上が期待できる。また、スラグ内部循環流による混合促進の解析では、呈色反応を利用して色変化速度を混合の指標とし、スラグ長さによる混合度の違いを定量的に解析できる可能性が示された。しかし、解析精度の向上のために撮影条件の調整などもう少し時間を要するため、広範な流体の組み合わせについて実験できていない。昨年度に提案した形状予測についても、流体種類を増やした適用可能性の検討を行う予定であったが、達成できていない。また、液液スラグ流の圧力損失推算式を半理論的に導くことができたが圧力計の校正に時間がかかったため、今後実験を重ね、種々の流体の組み合わせについて適用可能性を明らかにする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
液液スラグ流の形状予測、圧力損失予測についてはシリコンオイルーグリセリン水溶液以外に流体種類を増やし、とくに界面張力および粘度に着目し適用可能性を明らかにする。 可視化による混合度の解析については、撮影環境を整えるとともに用いる流体の種類を増やす予定である。また、スラグ形成に重要な流体分散器を現在は市販の配管部品としているが、分散器内径を様々に変化させ、生成するスラグ長さをより広範囲に変化させて実験を行いたいと考えいている。 微粒子合成実験については反応管直径、2流体の体積流量を変化させ生成粒子径分布に及ぼす影響をより詳細に検討する。このとき、安定的にスラグが形成する流体条件を明らかにする。具体的には密度差による反応液スラグの浮上や粘度比が大きいことによる液液界面不安定が発現しない条件を探索する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
スラグの撮影にあたり、現在までの実験条件の範囲では研究室に既設の撮影装置で撮影可能であったため当初購入を予定していた超小型高性能ズームレンズの購入は必要がなかった。より安定なスラグを形成、観察するためにシリンジポンプの購入やカメラの購入、またマイクロ流体チップの導入など様々な検討を行ったが、計画よりやや物品の購入は少なかった。また、学会発表を行わず旅費を使用しなかったため次年度使用額が生じた。次年度は学会発表を行う予定である。また、操作条件範囲に拡大に伴い新たな機器の購入が必要になる可能性がある。
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