研究課題/領域番号 |
18K04830
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
直江 一光 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (00259912)
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研究分担者 |
今井 正直 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80193655)
澤井 淳 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 教授 (80288216)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リキッドマーブル / バクテリアナノファイバー / マイクロリアクター |
研究実績の概要 |
本研究は、微小なリキッドマーブル集合体を好気性微生物用のマイクロリアクターとして利用した新規のバクテリアナノファイバー生産システムの構築を目指している。そこで、2019年度は以下の項目について研究を実施した。 1) 前年度において明らかにしたリキッドマーブル(LM)の調製条件を元に、バクテリアファイバー(BF)産生菌培養の前段階として、モデル好気性細菌(枯草菌)の培養について検討した。まず、枯草菌を含む培養液をコア液として封入したLMについて、環境湿度を高めた条件で24時間インキュベートしたところ、コア液内の菌体数は大きく増加した。この結果はLM界面において酸素透過が十分に行われていることを示唆している。さらに、試験管による培養との比較を行ったところ、LMによる培養は、酸素が十分に供給される条件の試験管よりも菌体の増殖数が多く、本系が好気性微生物の培養媒体として優れていることを明らかにした。 2) 前年度に選定したBF産生菌である酢酸菌のうち、2種の由来菌株について培養条件の検討を行った。なお、培養は試験管を用いて行った。まず、各培養時間におけるBF産生量を調べたところ、由来によって産生重量および産生速度に違いが見られた。また、培地条件として、グルコース濃度およびpHの影響について調べ、BF産生にとって最適なグルコース濃度およびpH条件を見出した。また、生成されたファイバー膜を電子顕微鏡で観察したところ、セルロース繊維を確認した。 3) 実際に酢酸菌を用いてLM系において培養を行い、BFの産生を行ったところ、2日間という短期間で、ほぼLMの形状のBF塊を得ることに成功した。 4) リキッドマーブルロータリー培養システムの構築を行った。リキッドマーブル培養用のシャーレと三次元シェイカーを組み合わせ、それらを定温インキュベーターに設置することにより構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度では、上述の概要に示すように、成果として1) バクテリアファイバー(BF)産生菌培養の前段階として、モデル好気性細菌(枯草菌)の培養について検討し、リキッドマーブル(LM)系において枯草菌が大きく増殖することを見出し、LM界面において酸素透過が十分に行われていることを示した。さらに、試験管による培養との比較を行ったところ、LMによる培養は、酸素が十分に供給される条件の試験管よりも菌体の増殖数が多く、本系が好気性微生物の培養媒体として優れていることを明らかにした。2) 2種の異なる由来の酢酸菌について試験管による培養条件の検討を行い、由来によって産生重量および産生速度に違いが見られることを明らかにするとともに、BF産生にとって最適なグルコース濃度およびpH条件を見出した。また、電子顕微鏡観察によりセルロース繊維を確認した。3) 実際に酢酸菌を用いてLM系において培養を行い、2日間という短期間で、ほぼLMの形状のBF塊を得ることに成功した。4) リキッドマーブルロータリー培養システムの構築を行った。このようにほぼ当初計画通りの成果が得られており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、微小なリキッドマーブル(LM)集合体を好気性微生物用のマイクロリアクターとして利用した新規のバクテリアナノファイバー生産システムの構築を目指す。 具体的には、(1) 前年度に引き続きバクテリアナノファイバーを産生するモデル好気性微生物として着目した酢酸菌について、その培養条件、バクテリアナノファイバー産生条件の探索を行う。(2) 前年度に構築したロータリー培養システムを用いてリキッドマーブル系におけるバクテリアナノファイバー産生条件の探索を行う。(3) リキッドマーブル系からの産生バクテリアナノファイバーの回収操作条件について検討する。これらの知見を基に、新規バクテリアナノファイバー生産システムの構築を目指す。
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