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2020 年度 実施状況報告書

金属アルコキシドによる金属水酸化物脱水法を用いた固体塩基合成

研究課題

研究課題/領域番号 18K04831
研究機関北海道教育大学

研究代表者

松橋 博美  北海道教育大学, 教育学部, 教授 (70192341)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード固ー液界面 / 複合金属酸化物 / 固体塩基
研究実績の概要

本研究の目的は,アルカリ土類金属水酸化物の脱水に関し加熱に代わる方法として,金属アルコキシドの加水分解反応を利用した化学的な方法によって金属水酸化物を脱水し,高表面積かつ高活性な金属酸化物固体塩基を合成することである。研究の特色は,固体と液体の界面での金属水酸化物と金属アルコキシドとの反応によって,化学的に水酸化物を脱水し酸化物とするという,新しい酸化物合成法にある。
酢酸エチルに溶解したアルミニウムイソプロポキシドと,固相のBa(OH)2・H2Oとの固-液界面反応を使って,BaO-Al2O3固体塩基触媒を合成した。アルミニウムイソプロポキシドは,Ba(OH)2・8H2Oの結晶水分子で加水分解され,アルミナと2-プロパノールに変化した。Ba(OH)2・8H2Oと等モルのアルミニウムイソプロポキシドを用いて合成した試料を673 Kで熱処理した触媒が,塩基触媒反応であるジアセトンアルコールの逆アルドール反応に最も高い活性を示した。活性な触媒ではX線回折でBaO相が見られないが,無定形のAl2O3に高度に分散したBaOが活性種であると思われた。
Sr(OH)2・8H2Oとアルミニウムイソプロポキシドを,少量の2-プロパノール中で混錬,その後溶媒を加えてかく拌,ろ過,乾燥,焼成してSrO-Al2O3複合酸化物触媒を得た.SrO-Al2O3は,逆アルドール反応に高活性を示し,活性はモル比1:1の場合でSr(OH)2の約4倍,物理混合で合成したSrO-Al2O3の約2倍であった。X線回折では,活性種と予想されるSrOは見られなかったが,X線吸収スペクトルよりSrO微粒子であることが推定された。
以上の結果,固相の金属水酸化物と液相のアルコキシドの界面反応は,高度に分散した複合金属酸化物を調製するのに有用であることが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は,金属アルコキシドの加水分解反応を利用した化学的な方法によって金属水酸化物を脱水し,高表面積かつ高活性な金属酸化物固体塩基を合成することである。
結晶水を持つBaおよびSrの水酸化物と金属アルコキシド(アルミニウムイソプロポキシド)との固体と液体の界面での反応において,アルコキシドの加水分解で結晶水が消費されるため金属水酸化物”分子”が水酸化物表面から剥がれ落ち,部分的な加水分解で溶媒(酢酸エチル,2-プロパノール)に不溶となったアルコキシド分子と,沈殿の状態で良く混合した複合酸化物前駆体(水酸化物)が生成することが明らかになった。
前駆体を加熱して得られた複合金属酸化物は,塩基触媒反応に高活性を示した。活性種であるBaOやSrOは,X線回折では検出されないほどの微粒子で,SrOではX線吸収スペクトルにより存在が明らかとなった。
以上の結果は,水酸化物の脱水がアルコキシドの加水分解で行える可能性があるという予想とは異なる結果となったが,固体ー液体界面での反応で,非常に良く混合した複合金属酸化物前駆体が得られるということを明らかにした。固体ー液体界面での反応による複合金属酸化物前駆体の合成はこれまでに例がなく,顕著な研究成果と言える。
本研究の進捗状況については,複合金属酸化物の合成プロセスにおいて,固体ー液体界面反応の有用性を明らかにしたという点で,概ね順調に進展していると評価できる。

今後の研究の推進方策

本年度は,固体ー液体界面反応の固体触媒合成への応用として,固体超強酸である硫酸化金属酸化物のOne-pot合成を試みるとともに,研究課題について成果を総括する。
硫酸化金属酸化物は,無定形の酸化ジルコニウムや酸化チタンの表面に,硫酸イオンを硫酸水溶液からの吸着や,硫酸アンモニウムの含浸により導入し,高温で焼成することによって得られる。合成においては,下地となる無定形金属酸化物の合成が重要で,金属酸化物の性状によっては全く酸触媒活性を示さない例も見られた。本研究では,詳細な条件検討が必要な無定形金属酸化物の合成段階を回避し,結晶水を持つ金属硫酸塩と金属アルコキシドの固体ー液体界面反応によって,硫酸イオンと金属酸化物前駆体が良く混合した固体超強酸前駆体をOne-potで合成することを目的とし,これによって固体ー液体界面反応の有用性をさらに明らかにする。
硫酸化で超強酸となる金属酸化物としては,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化アルミニウム,酸化鉄などが知られている。また,これらの金属イオンでは,例えば鉄であれば硫酸鉄(Ⅱ),鉄(Ⅲ)アンモニウムミョウバンなど,結晶水を有する多様な硫酸塩が存在する。さらに,ジルコニウム,チタン,アルミニウムでは,アルコキシドを容易に入手することができる。このため,金属硫酸塩と金属アルコキシドの組み合わせは多様である。
本年度は,研究課題の最終年度であることから研究課題について成果を総括することとし,金属硫酸塩と金属アルコキシドの固体ー液体界面反応については,いくつかの組み合わせについて試み,総括に加えることとする。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染の拡大で,参加を予定していた学会がリモート開催となり,予定していた旅費の一部が残額となったため。
今年度は,固体ー液体界面反応で金属硫酸塩と金属アルコキシドの新しい組み合わせを試みるため,薬品購入費用が予定より多くなることが見込まれ,これに使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Synthesis of SrO-Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub> Solid Base Catalysts from Strontium Hydroxide and Aluminum Alkoxide by a Solid-liquid Interface Reaction2021

    • 著者名/発表者名
      MATSUHASHI Hiromi、IWAMOTO Asako、SASAKI Misaho、YOSHIDA Kana、ARITANI Hirofumi
    • 雑誌名

      Journal of the Japan Petroleum Institute

      巻: 64 ページ: 103~111

    • DOI

      10.1627/jpi.64.103

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 固体-液体界面の反応によるストロンチウム複合酸化物触媒の合成2020

    • 著者名/発表者名
      松橋博美,岩本麻子
    • 学会等名
      第125回触媒討論会
  • [学会発表] 固-液界面反応によるストロンチウム-アルミニウム 複合酸化物触媒の合成2020

    • 著者名/発表者名
      松橋博美,岩本麻子,有谷博文
    • 学会等名
      第126回触媒討論会

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公開日: 2021-12-27  

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