研究実績の概要 |
グラフェンなどのナノ炭素材料材料の特性の飛躍的向上には、エッジやヘテロ元素などの種々の欠陥導入が必要不可欠である。しかし既存の導入法では、複数種の欠陥が導入され構造が複雑化してしまい、構造と特性の関係が不明確であった。本研究では、エッジ構造の異なるナノ炭素材料の合成を目指し、ジグザグエッジやアームチェアエッジ、ジグザグライクエッジなどを含む芳香族化合物の原料を加熱し、構造制御状態を数値化する方法を開発した。特に赤外分光分析はこれまで炭素材料のエッジの構造解析にはほとんど利用されてこなかったが、簡単な分析でデータが得られる赤外分光分析におけるC-H面外変角振動とC-H伸縮振動とを組み合わせることによりエッジ構造を既存の方法より高精度に数値化することに成功した。また、6員環に加えて5員環を含む芳香族化合物も測定し、5員環を含む炭素材料の構造解析にも応用できる分析技術を確立した。さらに元素分析や反応分子動力学計算、ラマン分光分析と密度汎関数法によるスペクトル計算を合わせて解析することにより、エッジ構造を多角的分析により詳細に解析することに成功した。ジグザグエッジやアームチェアエッジを含む炭素材料においては、酸素との反応性にも違いが明確に表れ、反応性からも異なるエッジ状態の炭素材料が調製できることを示した。本研究成果は、Y. Yamada, M. Kawai, et al, ACS Appl. Mater. Interfaces, 10 (2018) 40710-40739や、T. Sasaki, Y. Yamada et al., Anal. Chem. 90 (2018), 10724-10731に掲載されている。
|