研究課題/領域番号 |
18K04839
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小河 脩平 早稲田大学, 理工学術院, 主任研究員(研究院准教授) (40707915)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 資源・エネルギー有効利用技術 / 水素製造 / 水分解 / 低温電場触媒反応 / ストレインエフェクト |
研究実績の概要 |
構造歪みを導入(ストレインエフェクト)した固体酸化物触媒への電場印加により,低温で固体酸化物触媒の表面格子酸素の放出および水蒸気による格子酸素の再生を促進し,水から水素と酸素を分離して生成することを目指した。反応装置には固定床流通式反応器を用い,整粒した触媒を充填し,その両端に直流電流を印加しうるステンレス製電極を設置し,電場中での反応を行った。本年度は,触媒材料として,これまでに電場中で水素生成・酸素生成それぞれに活性を示すことを見出しているCe系酸化物に加え,スピネル型やペロブスカイト型酸化物について検討を行った。またCeO2への異種カチオンドープが水の解離吸着に及ぼす影響をDFT計算により検討した。 3d遷移金属を含む種々のスピネル型酸化物を用いた時にも,表面格子酸素の放出による酸素生成ならびに,還元処理により格子酸素欠損を生成した触媒と水蒸気の反応による水素生成が,それぞれ進行することを見出したが,400℃以上の高温条件を適用しても触媒サイクルは成立しなかった。一方で,炭化水素やアルコールを還元剤とする水素製造(水蒸気改質)や,水蒸気共存下の炭化水素の脱水素反応において,ストレインエフェクトや電場アシストの適用により,低温でも高い活性が得られることを見出した。このように構造歪みの導入や電場アシストにより,酸化物触媒の表面格子酸素を介した酸化還元サイクルが低温でも促進されることを示し,本研究コンセプトの有効性を示した。加えて,DFT計算を用いた研究により,CeO2にAlなどのイオン半径の小さいカチオンをドープすることにより,水分子の解離吸着エネルギーが低下することが示されており,これまで検討してきたCe-Cr-O系とは異なる新たな視点での材料設計指針が得られた。これらの成果は論文や学会等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ストレインエフェクトや電場アシストを活用することにより,低温でも格子酸素を介した酸化還元反応が起こる固体酸化物材料がいくつか見つかっている。これらの材料を触媒とし炭化水素やアルコールを還元剤として用いることで,格子酸素を介した酸化還元サイクルが低温でも効率的に進行し,水素が高い収率で得られた。まだ水から直接水素と酸素を分離して生成する触媒サイクルは実現していないが,DFT計算により水分子の解離活性化に影響する新たな因子が見つかり,これまでと異なる触媒設計指針が得られつつある。このように,水の直接分解を触媒的に進行させられていないものの,新しい触媒材料の創出が期待できる知見や本研究コンセプトから派生した成果が得られていることから研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
400℃以上の高温条件での試験や,反応条件(温度・雰囲気・電場アシスト)にパータベーションを与えることで触媒サイクルの成立を目指す。DFT計算により新たな触媒材料設計指針が得られたため,指針に基づいて新規触媒材料の合成と活性評価に取り組む。また,本研究で得られた触媒材料が,水分子の活性化を含む様々な触媒反応に対して高い性能を示すことを見出したため,これらも並行して進め,「ストレインエフェクトと電場アシストのシナジーによる酸化還元反応の低温駆動」という本研究コンセプトの一般化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中に所属機関を異動することが決まり,異動先で研究環境を構築する必要に迫られたため,旧機関で購入予定であった消耗品や部品等の購入費用を次年度に回し,異動先機関で購入することとした。
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