固体酸化物触媒への構造歪みの導入(ストレインエフェクト)による酸化還元特性の制御,ならびに電場印加による固体酸化物触媒表面における電子や酸化物イオンの伝導や反応を能動的に制御することで,低温で格子酸素を介した酸化還元反応を進行させることを目指した。反応装置には固定床流通式反応器を用い,整粒した触媒を充填し,その両端にステンレス製電極を設置し,高圧電源を用いて直流電流を流すことで電場を形成し,活性試験を行った。また通常の活性試験に加え,ケミカルルーピング法を適用することで,従来の平衡制約を超えた転化率を達成することも目指した。 前年度にCeO2にAlなどのイオン半径の小さいカチオンをドープすることにより,水分子の解離吸着エネルギーが低下することがDFT計算により示されたため,CeO2に種々の金属カチオンをドープし,活性試験を行った。その結果,水蒸気のみから水素と酸素を分離して生成する反応については触媒サイクルが成立しなかったものの,メタンを還元剤とする水素製造(メタン水蒸気改質)においては,Pd/Ce0.9Al0.1Ox触媒がPd/CeO2触媒よりも高い活性を示すことを見出し,DFT計算から推測された結果を実証した。水蒸気雰囲気下でのエタン脱水素においても,ペロブスカイト触媒に格子歪みを導入することで,水蒸気と格子酸素が関わる酸化還元反応が促進されるために高い活性を得られることが,DFT計算により示された。さらに,酸化インジウムに銅をドープして構造を歪ませることで格子酸素が動きやすくなり,その結果,400℃という低温でもケミカルルーピング法による二酸化炭素の水素化反応を高い活性で進行させうることも見出した。これらの成果は論文や学会等で発表した。
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