研究課題/領域番号 |
18K04842
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中澤 光 東北大学, 工学研究科, 助教 (40584991)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 銀ナノ粒子 / キチナーゼ / 高密度提示 / 高活性化 / 安定化 / 酵素ライブラリー / 抗真菌剤 |
研究実績の概要 |
昨年、欧米やアジアで初めて真菌症パンデミック(世界的流行)を起こったことから、耐性を持ちにくい新たな作用機序の抗真菌剤の開発が望まれる。 本申請では、この独自のクラスター化設計技術を進化させ、それ自身が高い抗真菌活性を有し、耐性が起きにくい銀ナノ粒子を土台として、その表面に古くから天然の抗真菌剤として機能しつづけている耐性を持ちにくい酵素(キチナーゼ)をライブラリー化し、様々な比率でクラスター化することで、使用環境にあわせてオーダーメイド可能な、50倍に抗真菌活性を増強するナノバイオ抗真菌剤を提案する。 実施計画では30年度はステップ1.抗菌活性の高い銀ナノ粒子の安価な合成法の開発、ステップ2.高活性なキチナーゼのスクリーニングおよびステップ3.銀ナノ粒子表面へのキチナーゼ提示デザインを行う計画となっていた。1に関しては、HEPES bufferと銀イオンを混合し、銀ナノ粒子の合成に成功した。銀ナノ粒子作製できた。しかしながら、想定通り、安定して同じ形および同じ表面積の粒子を作製することは熟達が必要であった。今後もこの粒子の安定作製がネックになる可能性が高いことが分かった。2に関しては、少し時間がかかったがCAZyデータベースと文献値から20種以上のキチナーゼを選択し、遺伝子全合成する直前まで来ている。今後ライブラリーを作製し順次評価していく。3の銀ナノ粒子表面への酵素提示に関しては、類似酵素であるキトサナーゼ活性を持つ酵素を6×Hisタグを用いた高密度提示させ活性を持つことの確認はできた。高活性化については若干向上傾向があるものの、再現性が取れていないため、条件検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も大きな障壁であり苦戦すると考えていたのは、まず銀ナノ粒子に酵素を提示して活性を示すか否かであったが、この問題をクリアできたことが大きい。 酵素ライブラリー作製の進捗がやや遅れてはいるものの、技術的課題は少ない部分であるため全体の進捗に影響は少ない。 そのため全体でみるとおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
安定した表面積の銀ナノ粒子合成技術の開発がキーとなることから、引き続き継続して力を入れて行っていく。さらに銀ナノ粒子と酵素の提示密度の最適化がこれまでの知見から重要であることもわかっていることから、粒子への酵素提示密度と条件を細かく検討し、安定した範囲を決定する。最後に有望なキチナーゼを20種類程度ライブラリー化し機能として安定性と抗菌活性でスクリーニングを行い、有望酵素に関して、条件を詰める。この時点で学術論文を執筆し公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
有望酵素の選抜のために、キチナーゼの専門家に相談したところ、難航し、選抜に思ったよりも時間を費やしてしまった。そのため高額な遺伝子全合成用の費用が次年度に繰り越しとなった。またそれに伴い論文化のための費用も次年度に繰り越した。 次年度は、酵素を20種類購入し、約600,000円使用する。論文を1報作成するため英文校閲と合わせて約300,000円使用する計画である。
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