研究課題/領域番号 |
18K04846
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
平川 秀彦 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90451799)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シトクロムP450 / 電子伝達システム / スクリーニング / 自己集合 |
研究実績の概要 |
シトクロムP450は直接C-H結合に作用し、水酸化、エポキシ化、脱アルキル化などの反応を触媒することができるため、その有効利用が可能となれば、酵素による物質変換の幅も大きく広がる。シトクロムP450は、パートナーとなる電子伝達タンパク質と複合体を形成することにより電子を受け取り、触媒活性を発揮する。基質の結合が電子伝達のスイッチとなるため、基質非存在下ではパートナーとなる電子伝達タンパク質とP450間の相互作用を検出することができず、パートナーとなる電子伝達タンパク質の特定も困難である。 本研究では、シトクロムP450、電子伝達タンパク質、還元酵素を人為的に集合させた場合に、基質非存在下におけるシトクロムP450―電子伝達タンパク質間の相互作用が、還元酵素による電子伝達タンパク質の還元反応を競合的に阻害する現象を利用し、その相互作用を検出できることをモデル酵素系により明らかにした。Pseudomonas putida由来シトクロムP450(P450cam)は電子伝達タンパク質としてプチダレドキシン(PdX)から電子の供給を受け、PdXはプチダレドキシン還元酵素(PdR)により還元される。人為的にPdXとPdRを集合させた場合、PdRによるPdXの還元速度は、P450camの共集合により低下することが明らかになった。さらに、PdX変異体を用いることでP450―PdX間相互作用の強さがPdRによるPdXの還元速度に影響を及ぼし、還元速度の低下度と相互作用との間には相関があることを見出した。以上の研究成果により、人為的にシトクロムP450、電子伝達タンパク質、還元酵素を集合させ、還元酵素による電子伝達タンパク質の還元反応の速度低下を評価することにより、基質非存在下でもシトクロムP450―電子伝達タンパク質間の相互作用が検出でき、電子伝達タンパク質パートナーも可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、シトクロムP450―電子伝達タンパク質間の相互作用を検出することにより、基質非存在下で電子伝達タンパク質を特定することを目指している。その中で、還元酵素による電子伝達タンパク質の還元速度の低下度と、シトクロムP450―電子伝達タンパク質間の相互作用との間には明確な相関関係があることを明らかにしており、電子伝達タンパク質を特定するための方法論が確立しつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
ハイスループットな探索系を構築するために、固定化した状態での評価系を確立し、マルチウェルプレートを用いたスクリーニング系を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク質の精製方法を最適化したところ、予定していた過程を省略しても、十分な精製度で得られることが分かったため。 次年度では、国際学会での招待講演が予定されているため、その旅費として使用する計画である。
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