Transcription Activator-Like Effectorタンパク質(TALE)は、DNA配列中の塩基を特異的に認識することが可能であり、DNA配列依存的に、DNAと複合体を形成することができる。このことから、高度な正確性が要求される遺伝子検査において、TALEは一塩基の違いを見分ける優れたDNA配列認識素子となると予想される。したがって、TALE-DNA複合体形成を検出することで、検査対象DNA中にターゲット配列が存在するかを確認可能となる。 具体的には、標的として一塩基変異が起こることで知られるKRAS遺伝子を用いた。TALEによって一塩基変異を見分けるために蛍光タンパク質YFPVenus、発光タンパク質Renilla Luciferaseを融合したTALEを調製し、一塩基変異が存在する場合のみ生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)が起こる系を作製した。2種類のTALEに目的とするDNAを加えBRETによる発光評価を行った。標的とした変異型(Mutant)の時のみBRETにより蛍光強度が高い値を示し、KRAS配列を持たない時および野生型(Wild type)では強度が著しく減少した。蛍光偏光解消法による解離定数(Kd)の値が変異型では296nM、野生型では>1800nMと推定された。このことからもTALEが変異型にのみ強く結合することが分かる。 次に作製したTALEを利用したTALENの機能および一塩基変異配列への選択的な切断の評価を行った。標的配列であるKRAS (GAT)のときのみ選択的に切断されており、それ以外のKRAS配列では切断がほとんど起こっていない。この結果から作製したTALENは標的配列選択的な切断が可能であることが示唆された。
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