研究課題/領域番号 |
18K04853
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中島田 豊 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (10281164)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水素 / 合成ガス / 二酸化炭素 / 好熱性菌 / エタノール / ATP / 酸化還元バランス |
研究実績の概要 |
本研究ではM. thermoacetica ATCC39073 を宿主として、アルデヒド脱水素酵素(aldh)を導入するとともに、酢酸合成に関与する pduL1およびpduL2遺伝子を片方または両方破壊した遺伝子組み換え株として、それぞれaldhΔpduL2、aldhΔpduL1ΔpduL2を用い、フルクトース、H2+CO2、合成ガスを基質として発酵実験を行った。 結果、フルクトースにおいては全株においてエタノール生産が確認された。このことより、aldh導入によってエタノール生産が可能であることが示された。また、pduL2のみを破壊した場合よりも、pduL1 と pduL2 の両破壊株が、より高いエタノール生産性を示した。一方、H2+CO2培養では、いずれの株においてもエタノール生産は確認されなかった。また、aldhΔpduL2株においては、微量のギ酸、および酢酸が検出されたが、aldhΔpduL1ΔpduL2株においては、生産物が検出されなかった。さらに合成ガス培養ではaldhΔpduL1ΔpduL2株においてエタノール生産は確認されなかった。 そこで、ガス基質からのエタノール生産における代謝ボトルネックを予測するために、aldhΔpduL2、aldhΔpduL1ΔpduL2の合成ガス、H2+CO2の代謝量論式を作成した。その結果、エタノール生産が確認されなかったaldhΔpduL2のH2+CO2培養では酸化還元バランスの乱れがボトルネックであると示唆された。また、aldhΔpduL1ΔpduL2の合成ガス培養ではATP不足が示唆され、H2+CO2培養では酸化還元バランスの乱れとATP不足の2つのボトルネックが示唆された。 以上のことから、酸化還元バランスの乱れ、ATP不足、この2つのボトルネックを解消することで、H2-CO2からのエタノール生産が実現できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書で想定していた通り、酢酸非生成株におけるH2-CO2の資化を妨害するボトルネックとしてATPの供給不足、および酸化還元バランスの崩れを、実験および理論的に見いだすことができた。従って、計画書通りに今後の研究を遂行することができると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
計画書で想定していた通り、酢酸非生成株におけるH2-CO2の資化を妨害するボトルネックとしてATPの供給不足、および酸化還元バランスの崩れを、実験および理論的に見いだすことができた。そこで、計画書通り、代謝工学的、および培養工学的にATPの供給不足、および酸化還元バランスの崩れを補正することを目的とした検討を進めていく。
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