研究課題/領域番号 |
18K04854
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
吉本 則子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40432736)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DNA / ハイブリダイゼーション / 蛍光法 / クロマトグラフィー / monolith / PEG |
研究実績の概要 |
今年度は、3~95塩基のチミンあるいはアデニンで構成されるオリゴDNAを用い、ハイブリダイゼーション形成挙動の解析を行った。解析には2本鎖にインタカレートする蛍光色素を用い蛍光強度から2本鎖形成量を評価する方法(蛍光法)とイオン交換クロマトグラフィーを用い1本鎖と2本鎖を分離して、それぞれを定量する方法(クロマトグラフィー法)の2種類の手法を用いた。蛍光法はpmolレベルで感度高く測定できることが示されたが、1本鎖単独であっても、蛍光が増加する配列が存在し、分子内部の塩基対を形成している可能性が示唆された。クロマトグラフィー法では、貫通孔を有するポリメタクリレートを基材するカラム体積100μLのQA CIM monolith (BIA separation)を用い、測定時間の短縮と必要サンプル量の最小化を行った。オリゴDNAの保持係数がその長さに依存して増加しており、塩基配列に関わらず60塩基程度までであれば1本鎖と2本鎖の分離が可能であることが示された。また、蛍光法とクロマトグラフィー法のそれぞれで求めた2本鎖形成収率は、分子内部で塩基対が形成されたものを除き、ほぼ等しい値をとった。これらの手法を用いて末端にPEG鎖を修飾した30塩基のオリゴDNAの2本鎖形成収率を求めたところ、未修飾のものと比べて8割程度低下する傾向が見られた。今後は、修飾するPEG鎖の分子量と分子構造や、構成するオリゴDNAの塩基配列や塩基数がハイブリダイゼーション収率とどのように関係するのかを調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイブリダイゼーション収率の解析に用いた蛍光法、クロマトグラフィー法ともに短時間で感度よく解析可能な条件検討を行い、それぞれ堅牢性のある解析方法が確立できた。この結果、予定していた塩基配列、長さのオリゴDNAのハイブリダイゼーション種率の解析については予定通りの期間で達成することが可能となった。 一方で、PEG修飾DNAの合成収率が高くなく、反応条件の検討に予想以上の時間を費やしている。また生成したDNAと未修飾DNAの分離と溶媒交換にも時間が掛かっており、これらが順調に進んでいない原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
PEG修飾DNAの合成方法の新たな検討を試行錯誤的に行っている状況であるが、改善の余地は見出している。このため、予定通り、様々な修飾構造を有するオリゴDNAのハイブリダイゼーション収率を今年度と同様の蛍光法およびクロマトグラフィー法で行うとともに融解温度や熱力学的手法を組み合わせて、その安定性についても評価を行う予定である。現在は、モデルとして90塩基程度の長さのものもターゲットとしているが、今後は塩基の長さは30塩基程度のものを主に検討する予定である。修飾PEGについては今年度は直鎖上のものを主に検討してきたが、生体安定性の高い向上効果が報告されている分岐PEGを用いた検討も行い、多分岐型と直鎖型の構造の違いが修飾DNA全体の構造にどのような影響を及ぼすのかについても検討を行う。さらに、修飾構造が実際に分解酵素に対する安定性に及ぼす影響についても調べる予定であり、分解酵素と修飾DNAが共存する系から時間毎にサンプリングして、今年度に取得した異なる塩基数の長さのDNAの溶出データを用いて、系内の残存DNAを定量し、修飾DNAと未修飾DNAの半減期の違いについても調べる予定である。
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