研究課題/領域番号 |
18K04858
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
山崎 智彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー代行 主幹研究員 (50419264)
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研究分担者 |
池袋 一典 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 卓越教授 (70251494)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トール様受容体9 / CpG ODN / Gカルテット構造 / 免疫活性化 / アジュバント / I型インターフェロン / インターロイキン |
研究実績の概要 |
自然免疫受容体トール様受容体9(TLR9)のリガンド分子である一本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)には、パリンドローム配列とポリG配列を持ち複雑な高次構造を形成してナノ粒子化するクラスAと直鎖構造のクラスBの2種類が存在し、両方ともTLR9に結合するにもかかわらず、誘導する因子がそれぞれI型インターフェロンもしくはIL-12/IL-6と異なることが報告されている。本研究では、DNAが細胞核内部で形成している高次構造の1つであるグアニン四重鎖(G4)構造に着目し、分子内G4構造もしくは分子間G4構造を形成させるようにCpG ODNの配列を設計することで、CpG ODNの立体構造を形成させ、免疫活性機能を改変することを目的として研究を進めている。 初年度ならびに2年次はG4構造のループ部分に導入するCpG配列を含む核酸の長さや配列を改変することにより、誘導するサイトカイン類の発現量を制御が可能であることを示した。また、単量体のG4-CpG ODNはハイブリット構造(グアニン四重鎖構造で、ヌクレオチド主鎖の配向が3:1)を取ることがわかっている。 2020年度はG4-CpG ODNの誘導に対するカチオン性リポソームの効果を検証した。すなわちカチオン性リポソーム存在下で、短いループ (GD-S)の場合はIL-6/IL-12、長いループ(GD-L)の場合はIFN-アルファを誘導することが示された。カチオン性リポソームに結合したCpG ODNがIFN-アルファを誘導せずにIL-6/IL-12を誘導する事象は世界で初めての報告である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験計画に沿って研究を進めた結果、当初予期していない結果が得られており、研究が大きく発展した。
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今後の研究の推進方策 |
カチオン性リポソーム存在下で、短いループ (GD-S)の場合と長いループ(GD-L)の場合で誘導するサイトカイン類が異なることが示された。GD-SとGD-Lはループ領域の長さが数塩基違うだけの一本鎖核酸であることから、大きさ、電荷などの分子特性は類似している。GD-SとGD-Lは共にカチオン性ナノ粒子表面に静電的相互作用で吸着していることから、TLR9と結合する場(小胞体)が2つのCpG ODNで異なる可能性は低く、サイトカインスイッチングのメカニズムは先の初期エンドソームから後期エンドソームに移動する仮説では説明できない。この結果を説明するために、期間を1年間延長しメカニズムの解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を申請する際に、予備実験を十分に進めてきた。予備実験の際に購入した試薬類の残りを利用して研究を進めたため、当初の予定額から下回った。 当初予期していない結果が得られ、そのメカニズムの解明を次年度に新たに行うこととし、未使用額はそのための物品費と人件費に充てることにしたい。人件費として1,000千円、試薬・物品・実験動物購入費用として600千円を使用する計画である。
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