研究課題/領域番号 |
18K04860
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
渡邊 秀樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (90422089)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗体医薬品 / 品質分析 / 進化分子工学 / 人工タンパク質 |
研究実績の概要 |
本計画では、抗体ドメインの変性構造を認識する人工タンパク質を分析プローブとした、抗体医薬品の高次構造分析技術を開発する。これまで開発してきた、抗体Fc領域の変性構造に特異的な小型人工タンパク質AF.2A1 (Watanabe, Anal. Chem., 2016) に加え、Fab領域など他の抗体ドメインの変性構造を特異的に認識する人工タンパク質をプローブとした抗体IgG変性の多面的な高次構造分析技術を実現する。 平成30年度は、標的としてFab領域の定常領域であるCH1-CLドメインを対象とした人工タンパク質の高機能化を進めた。人工タンパク質の高機能化はT7バクテリオファージを用いたファージディスプレイ法に基づき、無作為配列の伸長と親和性選択によって、nMオーダーの平行解離定数でCH1-CLドメインに結合する人工タンパク質を取得した。表面プラズモン共鳴法により詳細な特徴付けを行い、天然型立体構造のFab領域と高次構造が破壊された非天然型立体構造のFab領域とを厳密に識別することを確認した。抗体ドメインの特異性を評価するため、Fab領域、Fc領域、IgGの天然型立体構造と非天然型立体構造に対する結合を測定したところ、非天然型立体構造のFab領域とFab領域を含むIgGの双方に対して強い結合を示し、一方、非天然型立体構造Fc領域に対しては全く結合を示さなかった。また、天然型立体構造のFab領域、Fc領域、IgGに対してはいずれに対しても結合を示さなかった。このことは、取得した小型人工タンパク質がFab領域の天然型立体構造と非天然型立体構造を識別するのみならず、抗体ドメイン特異的に非天然型立体構造を識別していることを示している。以上の結果は、抗体医薬品の多面的な高次構造分析の実現可能性を実証する結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存のFc領域特異的人工タンパク質に加え、Fab領域を認識する人工タンパク質の取得・高機能化・特性解析を進めた。おおむね計画通りの進捗状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
取得した人工タンパク質群の物性・認識機構解析、及び分析プローブ特性評価を進めるとともに、分析適用範囲の拡大を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画として委託合成を予定した試料について、インハウスでより安価に合成できる系の構築に成功した。次年度以降の研究加速・効率化のため、当該助成金分を分子ライブラリ構築実験等に係る試料のスケールアップに使用する計画としている。
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