研究課題/領域番号 |
18K04864
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
湯村 尚史 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 教授 (80452374)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 密度汎関数法計算 / パイ共役 / 二次の非線形光学特性 / ナノ空間 |
研究実績の概要 |
前年度では、カーボンナノチューブの直径に依存して、内部のジメチルアミノニトロスチルベンゲスト集合体の安定構造が異なることがわかった。実際、直径 1 ナノメートル以下のナノチューブ内部では一列配列が安定であるものの、直径1 ナノメートル以上のナノチューブ内部では, 積層型が安定となった。今年度の研究では、ナノチューブ内部で安定なジメチルアミノニトロスチルベンゲスト二量体の構造を抜き出して、それらの構造における超分極率を密度汎関数法計算により算出した。この超分極率は、二次の非線形光学特性を表す物理量である。その結果、ジメチルアミノニトロスチルベン二量体の超分極率はその分子間距離に依存し、その依存の仕方は二量体の分子配列により異なることが明らかになった。この違いを反映して、ナノチューブ内部のジメチルアミノニトロスチルベンニ量体の超分極率はその直径に依存することがわかった。直径1 ナノメートル以上のナノチューブ内部で安定に存在する積層配列型ニ量体の超分極率はニ分子が別々に存在する場合の値よりも小さくなった。一方、直径 1 ナノメートル以下のナノチューブ内部で安定に存在する一列配列型ニ量体の超分極率は、二分子が別々に存在する場合の値よりも1.7 倍まで増大することがわかった。従って、ナノチューブのナノ空間を利用して、超分極率を最大にさせるジメチルアミノニトロスチルベンゲスト集合体の配列を選択的に生成できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究計画では、ジメチルアミノニトロスチルベンゲスト集合体の非線形感受率、つまり、超分極率の算出と、超分極率の温度依存性の算出である。研究実績の概要のように、超分極率の算出には成功したものの、ある温度におけるカーボンナノチューブ内部のスチルベンゲスト集合体の準安定状態の存在確率の算出と、それを用いた超分極率の温度依存性に関する知見を得ることができなかったため、このような判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、ある温度におけるカーボンナノチューブ内部のジメチルアミノニトロスチルベンゲスト集合体の準安定状態の存在確率の算出と、それを用いた超分極率の温度依存性に関する知見を得る。これについては、本年度得ているカーボンナノチューブ内部でのジメチルアミノニトロスチルベン移動に関するポテンシャルエネルギーにおける準安定状態をすべてピックアップして、その存在確率と超分極率が得られるプログラムを開発する。また、カーボンナノチューブをフェニルエチニレンビス尿素大環状化合物からなる有機ナノチューブに変更し、一年目および二年目と同じ研究を行う。この有機ナノチューブの構造を既に取得済みであり、研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
二つの理由が存在する。一つ目は、ある程度効率的に研究が行われたこと、もう一つ目は、コロナ禍により予定されていた学会がキャンセルになったり研究打ち合わせが中止になるなど予定されていた出張がなくなったため。 次年度は、多くの数値計算が必要となるため高性能計算機を購入する予定である。
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