研究課題/領域番号 |
18K04866
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
近藤 敏彰 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (20513716)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プラズモン / 陽極酸化ポーラスアルミナ / アルミニウム / ナノ集光 / 光化学反応 |
研究実績の概要 |
多くの光機能デバイスにはレンズが用いられており,デバイス性能の向上にはレンズの集光サイズの微細化が重要である.しかしレンズは,光の回折限界のため入射光の波長よりも小さな領域に集光することは原理的に不可能である.申請者らのグループはこれまでに,同軸構造を有するプラズモニック導波路(同軸ナノケーブル)の適用により,微小な領域への光集束が可能なことを報告している.そしてこのような同軸ナノケーブルは,ナノケーブル直径の微細化による集光サイズの更なる微細化が期待される.本課題では,光の回折限界を超えるナノ集光素子の形成とナノメートルスケールの極微光化学反応場への応用を目的とし,以下の項目に対して詳細な検討を実施する.(1) 同軸ナノケーブルの開口径のシングルナノサイズ化,(2) 単独同軸ナノケーブルの形成,(3) 極微光化学反応場の構築.2018年度は,同軸ナノケーブルの開口径の微細化と光伝搬効率の改善,および,光化学反応場への応用に関して詳細な検討を実施した.検討の結果,微細な開口径を有する同軸ナノケーブルの形成が観察された.同軸構造へのテーパー形状の適用により,微細な開口径を有する同軸ナノケーブルの光伝搬効率が改善される様子が確認された.得られた同軸ナノケーブルは光化学反応場への応用が可能であった.得られた成果は国内の学術会議(電気化学会,CSJ化学フェスタなど)にて報告を行った.国際的な学術雑誌への投稿準備も進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は以下のような進展がみられており,研究はおおむね順調に進展していると言える. [1] 微細な開口を有する同軸ナノケーブルの形成 同軸構造形成の出発構造である陽極酸化ポーラスアルミナの細孔の開口径を微細化することで,同軸ナノケーブルの開口径の微細化が可能であった.陽極酸化ポーラスアルミナの細孔径の微細化は,テーパー形状の適用,および,陽極酸化条件(化成電圧,電解液,浴温など)を最適化することで行った.テーパー型同軸ナノケーブルの形成は,テーパー型細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを同軸構造形成の出発材料とすることで行った. [2] 光化学反応場への適用 同軸ナノケーブルの光化学反応場への応用に関して検討を行った.同軸ナノケーブルの一方の開口付近にフォトポリマーを配置し,もう一方の開口よりレーザー光を導入した.その後,同軸ナノケーブルの開口付近の幾何学形状を走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ,光波長より微細な領域においてフォトポリマーが架橋反応により固化している様子が観察され,本検討で得られた同軸ナノケーブルが光化学反応場へ適用可能であることが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の成果を踏まえ,以下の項目に関して詳細な検討を実施する予定である. [1] 集光サイズの微細化 集光サイズは同軸ナノケーブルの開口径に依存する.同軸ナノケーブルの開口径の更なる微細化に関して検討を行う. [2] 光伝搬の効率化 微細同軸ナノケーブルの光伝搬効率の改善に関して検討を行う.これまでの検討の結果,開口径の微細化により同軸ナノケーブルの光伝搬効率が低下する様子が確認されている.Alなどの低損失な金属の適用により,微細同軸ナノケーブルの光伝搬特性の改善を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,光化学反応用のレーザーを購入するために1,350千円を計上していたが,検討を進めるに従いより安価なレーザーで代替可能なことが明らかとなったため,支出が抑えられた.2018年度の残額は,本年度の物品費と消耗品費として計上する.
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