研究課題/領域番号 |
18K04868
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
坂田 修身 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, ステーション長 (40215629)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 結晶性記述パラメータ / 局所構造秩序度 / 固溶度 / エネルギーX線回折 / Pd-Pt合金ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
水素吸蔵特性を有するPd-Pt合金ナノ粒子の結晶性を定量化するため、局所構造秩序度、固溶度の結晶性記述パラメータを新たに導入し数値化することに成功した。 シンクロトロン高エネルギーX線回折を用いて合金Pd-Ptナノ粒子(NPs)の結晶の格子歪を調べた。試料は、Pd NPs(直径6.1 nm)、PdコアおよびPtシェル構造を有するPd-core/Pt-shell NPsとそれから作製されたPd-Pt固溶体である。その化学成分と直径は、それぞれPd0.92Pt0.08: 6.7 nm、Pd0.79Pt0.21: 8.1 nm、Pd0.5Pt0.5: 11.2 nmである。 Rietveld解析から得られたPd NPsの格子定数はバルク値よりも大きかった。逆モンテカルロ(RMC)モデリングから、無秩序な構造を持っていることが分かった。Pd-core/Pt-shell NPsついては、コア/シェル界面での格子緩和のために、格子定数はPt含有量と共に小さくなった。他方、水素吸脱着の反応過程の後得られたPdPt固溶体NPの格子定数は、Pt含有量が増えると伸びた。これはVegardの法則に従った。局所構造秩序度を表すbonding-orientational order(理想的な結晶構造からの局所構造の偏差を表す)構造パラメータを導入し、固溶体NPsの原子配列構造の秩序度を評価し、Pt含有量と共に減少することが見出した。2元合金のナノ粒子内の固溶度を新たに定義し、Pd0.92Pt0.08、およびPd0.79Pt0.21 NPsの固溶度を、モデリングされた3次元のRMC構造から数値化した。得られたパラメータ値は0に近く、これはPdおよびPt原子が本質的にランダムにナノ粒子内で分布していることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結晶性記述パラメータ(局所構造秩序度であるbonding-orientational order、固溶度)を計画通りに、ナノ粒子の結晶性の評価に導入できた。とくに固溶度は、J. M. Cowleyの論文を参考にして数学的にナノ粒子に対して適用できた。またPd-Pt固溶体ナノ粒子の結晶性の評価、解析も計画どおりであった。
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今後の研究の推進方策 |
水素吸蔵特性を有するPdナノ粒子の結晶性評価も行う計画である。また、Ruナノ粒子の構造、電子状態とCO酸化触媒機能との関係を調べる予定である。さらに、硬X線光電子分光による内殻光電子スペクトル、価電子帯スペクトルやX線吸収端近傍スペクトルのデータを収集、その解析を行い、電子状態に関する情報も得て、結晶性記述パラメータと合わせてナノ粒子の触媒活性に寄与するパラメータを突き止める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
The 13th National Conference on X-ray Diffraction and ICDD Workshop of of Chinese Crystallographic SocietyとInternational Conference on Electronic Spectroscopy and Structure-14の会議で招待を受けたため、自費による負担額が抑えられたため。とくに前者の会議では飛行機代、宿泊代も先方が負担してくれた。 国内外の放射光施設での測定の際の旅費や国内の放射光施設でのビームタイム利用料に使用する予定である。また、論文成果の公開のより促進するため、学会や会議での発表の旅費や登録料、論文原稿の添削や投稿料金、さらにオープンアクセスの費用にあてる予定である。
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