研究実績の概要 |
1.Pdナノ粒子の構造、電子状態の研究 Pdナノ粒子(NPs)の構造秩序、電子構造と水素貯蔵特性の関係を、シンクロトロンX線を基にした高エネルギーX線回折、逆モンテカルロモデリング、X線吸収微細構造(XAFS)、硬X線光電子分光(HAXPES)を用いて調べた。試料の平均粒子直径は2.0, 4.6, 7.6 nmであった。得られた知見は1)2.0 nmのPd NPの格子定数は、直径4.6または7.6 nmのPd NPの格子定数よりも大きいことが観察された。2)粒子径が大きくなると、構造秩序が高くなり格子定数と原子変位が減少し、配位数が増加した。3)大きなNPのコア部分の構造秩序は、小さなNPのそれよりも高かった。4)Pd-H形成の結合強度は、粒子径の増加とともに増加した。Pd NPの表面秩序は、水素貯蔵容量とPd-H結合強度の増加に関連すると示唆された。 2.面心立方格子構造(fcc)と六方最密充填構造(hcp)Ruナノ粒子の選択的化学吸着の研究 Ru NPsの固有の電子構造と表面化学吸着挙動との関係をHAXPESを用いて調べた。試料はfcc(平均直径2.4, 5.4 nm)とhcp(2.2, 5.0 nm)であり、ポリビニルピロリドン(PVP)で覆われていた。内殻スペクトル(O 1sとC 1s, Ru 3p3/2)と価電子帯スペクトルを測定し解析した。高いCO酸化触媒特性を有するfcc Ru 5.4 nm NPは、他の3つのNP試料とは異なり、その表面ではCO2, CO, O2吸着に由来する内殻スペクトルが観察された。これは、中間的な化学吸着が形成され、金属とリガンドとの間、すなわちRu4dバンドとO2pとの間で電子の授受が起こったと解釈した。過密効果を導入しサイズによる表面吸着を説明した。コアレベルのスペクトルだけでなく、価電子帯構造も結晶構造とサイズの違いに大きく影響された。
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