研究課題
本研究では、1 nm前後の粒径を有する量子ドット光触媒に着目して研究を行った。量子ドット光触媒では励起電子-正孔対の空間的電荷 分離が困難であり、活性低下の一因として懸念されている。本研究では、異なる量子ドットを複合化させ、励起電子と正孔を異種粒子上に電荷分離することで、高機能性を示す複合量子ドット光触媒の開発を行った。前年度までに合成したBi2O3-WO3複合量子ドットについて、Ar雰囲気下、水中、エタノールを犠牲試薬として紫外線照射下での水素発生能を評価した。水素発生量はWO3量子ドットを上回る値を示した。一方で、反応中の触媒の色が無色から灰色へと変化し、反応終了後、大気開放することで元の無色に変化する。これはBi2O3-が反応中に還元し、金属となり、大気暴露することで元の酸化物に酸素酸化されることに起因することを、in situ XAFSで確認した。これはBi3+イオンの酸化還元準位がWO3量子ドットの伝導体下端よりも程エネルギー側に存在するため、WO3に生じた励起電子がBi2O3を還元可能なことに起因する。今年度は新たにIn2O3に着目し、WO3量子ドットとの複合化を行った。Bi2O3と同様に複合化によりWO3のフォトクロミズムの消失が観測された。また、In2O3は紫外線照射下で発光を示すが、この発光も複合下により消失した。この2点からIn2O3-WO3複合体の形成と、ドット間での円滑な電子移動が起こっていることを確認した。In2O3の場合はIn3+イオンの酸化還元準位がWO3の伝導体下端よりも高エネルギー側に存在するため、反応中にIn2O3が還元されることはない。そのため、Ar雰囲気下であったとしても、酸化物-酸化物の複合量子ドットとして機能することが明らかとなった。
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Materials Chemistry Frontiers
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10.1039/d0qm00640h