研究課題/領域番号 |
18K04870
|
研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
丸山 純 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (80416370)
|
研究分担者 |
高尾 優子 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究室長 (90416298)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | フタロシアニン / 炭素化 / ナノ粒子 / 自己組織化 / 複合化 |
研究実績の概要 |
ごく最近、研究代表者らにより、高分散規則配列したNiを含有する炭素系電極触媒が、アルキニル基が結合したNiポルフィリンの炭素化によって合成された。炭素化は一般的に複雑な熱分解を経るため、炭素化物の構造は乱雑となるが、アルキニル基による炭素骨格形成と、ポルフィリン環中心のNi-N4ブロックの維持によって、構造制御が初めて可能となった。しかし、Ni-N4ブロック分解防止のため炭素化温度を十分上げられず、導電性が低くなり電極触媒として低活性であった。また、現時点で中心金属はNiのみで、CO2還元能だけしかわかっていない。本研究では、アルキニル基が結合した金属フタロシアニンを合成し、その堅牢性と中心金属種の選択自由度を活かして、十分な高温での炭素化による導電性向上、高活性化、さらに、触媒の汎用性向上を目指している。 令和元年度において、8つのヘキシニル基に置換されたフタロシアニン(OC8Pc)、ならびに、その中心金属にNi、Coを導入したフタロシアニン(Ni-OC8Pc, Co-OC8Pc)の計3種類の化合物を合成した。Ni-OC8Pcの薄膜をシリカ基板上に作製し、アルゴン雰囲気中で熱処理を行い、炭素薄膜を得た。XRD測定を行ったところ、予想に反して規則構造は形成されておらず、XAFS測定の結果、Niの凝集が観察された。 そこで、方針を変更し、均一なナノ粒子の自己組織化を利用して3次元規則構造を形成することを着想した。ヘキシニル基の導入により生じた有機溶媒への高い溶解性を活かすことにより、合成したフタロシアニンと有機溶媒中に分散したFe3O4ナノ粒子と複合化した。炭素化後にナノ粒子を除去すると、アルキニル基の構造保持性により、細孔が3次元的に規則的に配列した炭素化物を得ることに成功した。また、それぞれの炭素化物にFe、Ni、Coが含有されていることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した規則配列した金属を含む炭素材料の作製は達成できなかったものの、Fe、Co、Niを含有する3次元規則的細孔を有する炭素材料の作製に成功した。高活性な炭素系電極触媒の活性、汎用性向上を目的とした本研究全体から見ると、本年度の研究計画は十分達成されたといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年度に得られた、構造規則性炭素材料について、ラマン分光法、X線光電子分光などの種々の分析を実施して詳細な物性を明らかにする。また、放射光を用いた広域X線吸収微細構造測定を行い、金属原子周囲の局所構造を明らかにする。電気化学分析を行い、炭素系触媒としての活性を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初必要と予想され、平成30年度に所内現有設備の追加オプションとして導入し使用する計画であった、キャピラリー回転アタッチメントならびにX線解析ソフトウエアは不要となり、高額であったため令和元年度に引き続き次年度使用額が発生した。研究遂行上、新たに必要となったナノ粒子の購入費用に使用する計画である。
|