研究実績の概要 |
ごく最近、研究代表者らにより、高分散規則配列したNiを含有する炭素系電極触媒が、アルキニル基が結合したNiポルフィリンの炭素化によって合成された。炭素化は一般的に複雑な熱分解を経るため、炭素化物の構造は乱雑となるが、アルキニル基による炭素骨格形成と、ポルフィリン環中心のNi-N4ブロックの維持によって、構造制御が初めて可能となった。しかし、Ni-N4ブロック分解防止のため炭素化温度を十分上げられず、導電性が低くなり電極触媒として低活性であった。また、現時点で中心金属はNiのみで、CO2還元能だけしかわかっていない。本研究では、アルキニル基が結合した金属フタロシアニンを合成し、その堅牢性と中心金属種の選択自由度を活かして、十分な高温での炭素化による導電性向上、高活性化、さらに、触媒の汎用性向上を目指している。 平成30年度において、8つのヘキシニル基に置換されたフタロシアニン(Pc′)、ならびに、その中心金属にNi、Coを導入したフタロシアニン(NiPc′, CoPc′)の計3種類の化合物を合成した。令和元年度においては、ヘキシニル基の導入により生じた有機溶媒への高い溶解性を活かすことにより、合成したフタロシアニンと有機溶媒中に分散したFe3O4ナノ粒子と複合化した。炭素化後にナノ粒子を除去すると、ナノ粒子の自己組織化により生じた規則構造と、アルキニル基の構造保持性により、細孔が3次元的に規則的に配列し、Fe、Ni、Coが含有された炭素化物を得ることに成功した。令和2年度には広域X線吸収微細構造(EXAFS)測定を行い、金属周囲の局所構造を調べ、各金属種について、炭素化、熱処理温度と、金属-N4構造の形成、保持、分解の関連についての知見を得た。令和3年度において、酸素還元反応、水素発生反応、二酸化炭素還元反応に対する触媒能を評価した結果、金属種によって触媒能が明確に規定され、また、熱処理温度、細孔径、EXAFSと相関することが明らかになった。
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