本研究は、我々が以前に提案したフォノンの整流機構に基づいて、熱流をある特定の方向に強く流すことのできる「フォノンダイオード」を開発した。具体的には、熱伝導性の極めて優れたグラフェンナノリボンに恣意的に三角形の構造欠陥を導入することによって、熱の非対称な伝導を発生させるデバイスを設計した。非平衡分子動力学シミュレーションを用いて、設計された熱ダイオードの熱整流効果を系統的に調べたが、期待される熱整流効果は得られなかった。しかし、三角形の構造欠陥にフォノンの経路を制限する線欠陥を加えたデバイスを設計したところ、低温領域(約50K)において、おおよそ23%の熱整流効率を得た。
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