多数のセンサーを生活環境に設置し、それらから得る情報を活用する社会が想定されている。そのために電力網から独立した小規模電源の開発が急務であり、生活環境中の物理現象を利用するエネルギーハーベスティングの重要性が認識されている。本研究では流体と2次元材料がつくる固液界面における動電現象に着目し、未だ学術的理解がなされていないメカニズムの解明を行い、自律発電デバイス化の指針提案とプロトタイプ作製を目的に研究を行った。 液滴/グラフェン界面における動電現象について、液滴の移動速度、界面の接触面積、窒素ドープグラフェンを用いた表面電位変調効果、表面電位と電気二重層、バンド構造と発電量、および窒素ドーパントの結合状態の相関解明を目的に研究を実施した。グラフェン上を移動する液滴の速度(流速)を変化させた結果、液滴の移動に伴いグラフェン面内流れ方向に生じる起電力は流速に依存し増加することが明らかになった。このことはグラフェン内のキャリア伝導を流体によって制御できることを示唆している。また発電量は界面の接触面積に比例することが明らかになった。さらに窒素ドープグラフェンを用いることで起電力が1.5倍まで上昇することが明らかになった。窒素ドープグラフェンでは、固液界面におけるグラフェンの表面電位が変化し、その値は窒素ドーピング量によって異なる。この条件下においてはより多くのカウンターイオンが壁となるグラフェン近傍に引き寄せられ、界面近傍に形成される電気二重層は薄く急峻な電位勾配が形成される。その結果として動電現象における出力電力が大きく向上することが明らかになった。さらに微小流路を用いたプロトタイプデバイスを作製し、発生する起電力の定量化にも成功し、発電デバイスとしての等価回路を規定した。
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