研究課題/領域番号 |
18K04883
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安武 裕輔 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10526726)
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研究分担者 |
深津 晋 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60199164)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ゲルマニウム / Germanene / Germanane / 電気二重層トランジスタ / インターカラント / 分子線エピタキシ / Hexagonalゲルマニウム |
研究実績の概要 |
シリコンフォトニクスに代表される光電子融合集積回路の実現による、超高速光インターコネクトや自動運転やVRセンサ応用に向けて、シリコンCMOSテクノロジと親和性の高いⅣ族半導体への電気伝導特性の向上と新規光機能の実証が要求されている。本研究は、シリコン透明波長帯域に適合するバンドギャップを有するゲルマニウムにおいて、新奇結晶成長手法の確立と電気・光機能向上に関する物性研究を推進することを目的としている。 本年度は、前年度に引き続きカルシムインターカラント介在トポロジカル変換エピタキシ法による水素終端Germanene(Germanane)のシリコン・ゲルマニウム基板上への成長手法の確立を目指して、成長条件の洗い出しを行い、成長基板温度を制御するだけで、CaGe2の結晶構造をナノウィスカー構造からZintl相まで選択制御可能なことを系統的な結晶成長追跡から見出した。またGermananeを活性層とする電気二重層トランジスタにおける基板材料の影響を検討するために、シリコン、ゲルマニウム、GaAs基板を用いた水Germanane電気二重層トランジスタの動作検証を行い、基板材料の伝導特性の影響を除去し、Germananeが高電子移動度を示すことを実証した。一方で低温測定時における接触抵抗増大とGermananeへの不純物ドーピング、大気安定性は依然として課題である。 カルシウムインターカラントのフッ素修飾によるHexagonalゲルマニウム形成など、新奇結晶構造形成とSWIR領域における明瞭な発光を新たに観測し、Ⅳ族半導体光増幅器・光エミッタの実証に向けて注力する体制が整いつつある。一方、年度末の不測の事態に対応するため、研究環境を一時閉鎖することとなり、研究進行予定の変更を余儀なくされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゲルマニウム基盤高機能電気・光素子の実現に向けて、本研究課題で確立してきたカルシウムインターカラント介在トポロジカル変換エピタキシにより、新奇ゲルマニウム低次元構造の作成と構造改変に起因した劇的なバンド構造変化の証左となる、電子移動度の向上、発光能の増大に関する物性研究を推進していた。一方でドーパントのサーファクタント効果抑制のため、Germananeへの分子線エピタキシによる不純物ドーピングでは比較的低い基板温度が要求されるが、カルシウムインターカラントとの相性問題が顕在化し、Germananeへのポストドーピング処理への方針決定までに時間を要した。また本年度末特有の社会情勢の要請により、研究活動の停滞を余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
カルシウムインターカラントのフッ化処理により、Hexagonalゲルマニウム低次元層形成の可能性を見出した。Hexagonalゲルマニウムは直接遷移型のバンド分散を示すが、中赤外領域にバンドギャップを有し、応用上重要なSWIR領域へのバンドギャップ制御が期待されている。本研究で見出した手法はHexagonalゲルマニウムの量子井戸を形成可能な現状唯一の手法である。そこで今後はHexagonalゲルマニウム成長技術の精錬と光発生機能探索に注力する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として主に結晶成長用基板材料、ドーパント導入用機器の準備への使用を予定していたが、効率的な基板使用のための新規試料ホルダ、in-situドーパント導入からex-situドーパント導入への方針転換を図り、本年度の物品使用料を使用計画よりも抑えることができた。次年度使用額の増加により、今後の研究予定である新規ゲルマニウム構造形成と物性探索に関する研究を加速することが可能となる。
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