研究課題
本研究の目的は、液体表面でのナノ薄膜および無機/有機積層ナノ薄膜の新規作製法における成膜・積層条件の検討と、考案した新規パターニング法による積層デバイスの試作、およびその特性評価である。液面上で形成した自立膜に対して、積層とパターニングに必要な適度な強度と柔軟性を付与するため、脆く弱い自立膜の表面に有機膜を均一に形成する検討を行ってきた。しかし、依然として有機膜の膜厚、組織の制御に課題が残った。数十nm程度の膜厚の有機膜形成を試みた場合では、数nmの均一な前駆膜と数十から百nmオーダーの不均一な凝集構造からなる有機膜が観察された。膜の柔軟性は有機膜の種類や界面への展開量にあまり依存しないことから、数nmの前駆膜による寄与が大きいのではないかと考えられる。この均一な前駆膜は、ポリ乳酸の場合にはカルボニル基が無機膜表面に対して平行に配向していることを示唆する結果も得られている。数十から百nmオーダーの不均一な凝集構造については、ポリ乳酸膜は比較的凝集の少ない膜が得られたが、ポリフッ化ビニリデン膜では前駆膜形成後の自己疎液性によって形成されたと推測される凝集パターンが観察された。この凝集構造は、令和元年度の助成金で導入した超小型原子間力顕微鏡により、積層後直ちに観察できるようになった。また、無機膜については、積層、パターニング後の熱処理温度の低下、配向制御に対する効果が期待される下層液上に拡張したゲル膜内での結晶化を微量ながら検出した。
すべて 2020
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Tetrahedron Letters
巻: 61 ページ: 151853
10.1016/j.tetlet.2020.151853