研究課題/領域番号 |
18K04890
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
田原 圭志朗 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 助教 (50622297)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 混合原子価 / 電荷分離 / 光励起 / トリアリールアミン |
研究実績の概要 |
令和元年度は、従来のレドックス活性化合物を部品として2核化し、さらに外部刺激応答性部位を導入し、新たなハーフセルを設計する指針のもと、ハーフセルの構造探索および合成を行った。トリアリールアミンを部品に選択し、これを共有結合で2核化した。さらに、ルイス酸としてかさ高いホウ素置換基を共有結合で導入した。これにより、可視光による窒素中心からホウ素中心への分子内電荷移動励起が可能になる。得られたトリアリールアミン2量体を1H-NMR、UV-vis-NIR、サイクリックボルタンメトリーにより、キャラクタリゼーションした。トリアリールアミン2量体は、2段階の1電子酸化還元波を示し、1電子酸化によって熱力学的に安定に混合原子価状態を取ることができることを確認した。化学酸化によって混合原子価状態に変換し、UV-vis-NIRスペクトルで評価したところ、トリアリールアミン部位間の原子価間電荷移(IVCT)動遷移に起因する近赤外吸収が観測できた。さらに、過渡吸収スペクトルで励起状態のダイナミクスを検討した。光励起後、数ピコ秒以内に、IVCTに由来するブロードな吸収が観測された。すなわち、光励起によって、電荷分離した混合原子価状態にアクセスできることを見出した。その後、数~10数ピコ秒でIVCTは短波長側にシフトしたが、周りの溶媒が関与する緩和を示唆している。溶媒依存性を調査したところ、平衡に達した際のIVCTエネルギーは、溶媒によってほとんど変わらなかった。基底状態での非局在性の特徴が、励起状態でより顕著になることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は上記のトリアリールアミン誘導体の他に、前年度検討したカテコラト錯体の組織化の検討を行ったが、化合物の取り扱いの困難さから、予想以上に時間を割く必要があっため、当初計画より研究が遅れる部分があった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、取り扱いが容易な有機レドックス分子やフェロセンを基幹物質にする予定であり、研究を効率的に進めていく。新たな院生1名と協力し、研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
・予想以上に使用している化合物の取り扱いが困難であった。このため、研究の進行が一部遅れているため。 ・当初の翌年度請求分に加え、適切な化合物の新たな合成・探索のため、試薬・消耗品等の購入に充てる。さらに、得られた化合物の機能評価のための物品購入に充て、研究を遂行する。
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