本研究では,無音・無風で駆動するセンサ搭載ドローンの実現を目的に,カーボンナノチューブ(CNT)を主材料とするバルーン型浮揚体の設計および作製を行っている.昨年度まで,セルロースナノファイバー(CNF)を骨格に用いたCNT自立膜からなるバルーンを作製し,赤外線照射により浮遊することを実証した.そして,CNT自立膜からなるバルーン構造において,さらに断熱性を向上するため,表皮の一部をCNFのみからなる自立膜に置き換え,浮力特性や放射伝熱シミュレーション等を実施した.CNF自立膜はCNT自立膜と異なり高い断熱性をもつことから空間温度の上昇により高浮力を得られる可能性がある.一辺10 cmの立方体バルーンにおいて,3面をCNF自立膜,残りの3面をCNT自立膜とした場合,全面がCNT自立膜のバルーンと同等の浮力が得られることがわかった.熱源となるCNT自立膜の専有面積が低減したとしても,断熱性に優れたCNFを利用したことにより内部空間温度の低下が抑制されたことによるものであると考えられる.また,バルーン浮揚体へのセンサ搭載に向けて,これまでに無い新規性の高い圧力センサを提案・開発した.本センサは液体金属とCNT自立膜から構成されており,液体金属とCNTとの接触界面積が圧力印可に伴い変化することに着目したものである.測定可能圧力範囲は使用するダンパー材に依存するため,ダンパー材の種類を変えるだけで幅広いダイナミックレンジの圧力センサを実現ことができる.さらに,バルーンに電源機能を搭載するため,CNF自立膜表面に紫外線を電力に変換する透明薄膜太陽電池を作製しその動作を確認した.透明薄膜太陽電池は,ZnOとNiOの積層構造から成り,約0.2Vの出力電圧を得ることができた.
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