研究実績の概要 |
昨年度と同様、研究成果を論文としてまとめているが、その過程で追加データおよびその解析が必要となり、現在、データ収集・解析を行っている。 まず、カリックス[4]チアクラウンー5(CA4SC5)の水銀捕捉能は、CA4SC5が水銀化合物と錯形成した際、NMRスペクトル上のクラウン部位のシグナルが低磁場側へ移動することによって判断できる。その結合定数の定量化を行う際に、NMR滴定により結合定数を算出し行ったが、その際にクラウン部位のシグナルと溶媒のシグナルが重なり、測定点の減少が新たな問題となった。そのため、我々は他の結合定数を測定できる指標はないか調査したところ、水銀と錯形成したCA4SC5の構造変化の度合いと結合の強さの関連性がみられてきた。特に、CA4SC5のt-ブチル基とフェニル基のシグナルは他のシグナルと離れ重ならず、またシングレットであるため結合定数を算出するシグナルとして最適であることが分かった。そのため、それら4種類のシグナルから結合定数を測定したところ、精度の高い結合定数が得られた。 次に、CA4SC5のX線結晶構造解析を行ったところ2種類の結晶構造が得られ、用いる再結晶溶媒によって、その構造は異なった。また、CA4SC5-Hg(II)の錯体構造を半経験的分子軌道計算ソフトSIGRESSで予想したところ、ちょうどその構造は錯体形成前後の構造に類似しており、このことからも、CA4SC5と水銀化合物の結合の度合いがその錯体構造に関連することが示唆された。 最後に、最近新しいホスト分子として合成している 環状化合物[3.3](2,2’)(4,4’-ビチアゾロファン)の合成条件の検討を行っており、チオアミド体とジブロモジケトンによるその環状化合物の合成の際、反応溶液の液性を調整することにより収率が向上することが分かってきた。
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