研究課題/領域番号 |
18K04897
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
堺井 亮介 旭川工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (90507196)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | キラル / 量子ドット / センサ / 分子認識 |
研究実績の概要 |
本研究では、迅速かつ簡便な蛍光キラルセンシングの新たな手法を提供するために、キラルレセプターで表面修飾された量子ドットを合成し、蛍光キラルセンシングに適用できることを明らかにする。当該年度は、キラルアミノ基とポリエチレングリコール鎖で表面修飾されたCdSe/ZnS量子ドットを合成し、キラル認識能について評価した。目的とする量子ドットは、キラルアミノ基を有する表面修飾剤とポリエチレングリコール鎖を有する修飾剤をオクタデシルアミンで保護されたCdSe/ZnS量子ドットに加え、合成した。それぞれの表面修飾剤の比に応じて、得られる量子ドットの溶解度が大きく異なった。キラルアミノ基を有する表面修飾剤のみを用いた場合、溶解度が非常に低かったため、十分な溶解性確保のためポリエチレングリコール鎖を導入した。得られた量子ドットにキラルカルボン酸を加えると、添加量に応じて消光した。その際、消光速度は加えたキラルカルボン酸のキラリティーに強く依存することが明らかとなった。例えば、O-アセチルマンデル酸をキラルカルボン酸として添加した際には、D体と比較してL体の添加がより大きな消光をもたらすことが明らかになった。また、O-アセチルマンデル酸以外のキラルカルボン酸に対しても同様に、キラリティーに依存した消光が観察された。従って、合成した量子ドットは光学活性カルボン酸の蛍光キラル分析に適用できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初達成を目指した、それぞれのエナンチマーに対して異なる蛍光応答を示す量子ドットの合成に成功した。また、分子設計と蛍光変化の関係など、さらに有効な量子ドットセンサの開発にとって有用な知見が大いに得られた。従って、本研究では当初の目的を十分に達成しており、計画通りの進展が達成されたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
表面修飾に利用するキラル化合物を再設計の上、異なるキラル分子で表面修飾された量子ドットを合成する。合成した量子ドットのキラル認識能を評価し、得られた結果を分子設計にフィードバックすることで、蛍光キラルセンシングに適用可能な光学活性化合物の範囲を広げる。また、エナンチオマー組成(光学純度)の定量的な分析についても、その可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度当初、目標としたキラルレセプターで表面修飾された量子ドットの合成に苦労した。そこで、表面修飾分子の再設計等を行い、試行錯誤を試みた。最終的には、目的とする量子ドットの合成に至ったが、予定より多くの時間を費やすこととなった。従って、当初計上していた化学試薬や溶媒、実験器具等の消耗品を購入するに至らず、当該年度の支出額は予定していた当初のそれより少なくなった。年度をまたいでしまったが、予定通り次の段階に進むことができるため、当初計上していた化学試薬や溶媒、実験器具等の消耗品を購入する必要が生じる。次年度では、今年度使用しなかった予算を使用し、それらの消耗品等を購入する予定である。また、次年度に計上した予算も使用し、研究を加速させる。
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