研究課題
基盤研究(C)
本研究は高速重イオン照射によるナノ粒子の楕円変形現象の機構を解明することを目的とし、ひいてはその背景にある高速イオンと物質の相互作用の基礎的過程の理解を深めることを目指すものであった。主な成果は、本研究分野でそれぞれ著名なFinlandの計算シミュレーショングループ、豪州のX線小角散乱実験グループとの国際協力により、本現象に提案されている複数のメカニズムの優劣を明確にして、(まだ謎は残るものの)現時点での最良のモデルを示した。またC60イオンを用いることにより、これまで数十MeV以上の高エネルギーが必要だった本現象を数MeVで実現し、実用化への突破口を示した。
イオンビームナノ材料科学
固体中に分散させた金属ナノ粒子に対してエネルギー数百MeVの高速重イオンビームを当てると全てのナノ粒子が同一方向に伸び、配向度の高い非等方的なナノ光学材料等の製造を実現する有力な手法として注目されている。本研究では同様の現象が数MeVのC60イオン照射でも起こることを明らかにした。これは単なる省エネルギー化技術ということだけではない。百MeV級の高速重イオンを発生できる施設は国内で2,3ヶ所しかないが、数MeVならば国内の多数の一般的加速器で可能である。本現象の産業化へひとつ近づいた。