本研究では、高アスペクト比金ナノロッドを高収率に合成する方法として報告されている界面活性剤ゲル中成長法に着目し、そのメカニズムの解明と、同方法を用いた高アスペクト比銀ナノロッドの合成法の開発を目的としていた。メカニズムの解明に当たっては、当初、金ナノロッドが長く成長するためには、ナノロッド成長のタイムスケールが界面活性剤ゲル化のタイムスケールと同程度であることが重要だと言われていたが、詳細は不明であった。そこで我々は、界面活性剤ゲルのX線構造解析や、ゲル中で成長する金ナノロッドの構造をその都度電子顕微鏡で確認することで、ゲルを構成する界面活性剤自己集合構造と、その中で成長する金ナノロッドの長さとの相関を観察した。その結果、金ナノロッドが長く成長する条件として、準安定相である水和ラメラ相が長時間安定に存在すること、およびこの水和ラメラ相とミセル相とが共存していることの2つが重要であることを明らかにした。次に、この方法を用いて銀ナノロッドの合成法開発に取り組んだ。これまでに、陽イオン性界面活性剤中で銀ナノロッドが成長することは報告されているが、我々はさらに合成収率の高い方法として、陰イオン性界面活性剤を用いる方法を開発した。その結果、数マイクロメートルの長さを持つ銀ナノワイヤーを、常温常圧で合成することに成功した。さらに、合成した銀ナノロッドの社会実装に向け、抗菌能テストを行った。その結果、大腸菌に対して抗菌能を発揮することが分かった。以上の研究成果は、高アスペクト比金属ナノロッドの合成メカニズムを解明し、安定した合成を実現したことに加え、銀ナノロッドの抗菌材としての展開の可能性も示しており、学術的・産業的に意義のあるものである。
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