3年目(R2年度)の最終年度は、ナノ材料モデル物質としてCNTを研究対象とし、CNTに適したN2ガス吸着の基準物質の検討を引き続き行った。1年目に得られた極低圧領域での表面平坦性の知見と共に、2年目に得た表面組成の知見を活用して種々カーボン材料の評価を行った。また、CNT集合体(バンドル)へのN2吸着サイト知見も照らし合わせて、実用化研究で検討されているCNT膜、糸、バルク等の成形体の構造解析を進めることができた。今年度の具体的な研究内容を記す。 表面の平坦性と組成に関する知見に基づき、CNTに適した基準物質を種々のカーボン材料(活性炭、活性炭素繊維、CB、黒鉛、メソポーラスカーボン、カーボンナノホーン、CNT)の中から検討した。表面組成としてO含有官能基濃度が高い活性炭、活性炭素繊維とその他のカーボン材料(CNT含む)に分類ができた。一方、表面平坦性に関してはカーボン粒子単体の外部表面へのN2単層の形成が起きる相対圧10-4~10-2での吸着カーブを中心に評価を行った。また、さらに低圧でのN2吸着サイトについても評価できた。これらの知見を鑑みると、表面官能基の少ないas-grown CNTに適した基準物質には、表面平坦性が高く官能基の少ない多層CNTのVGCFやGraphitized CBが好ましいことが分かった。ただし、表面改質したCNTや官能基導入処理を行ったCNTには、さらなる検討が必要であることが分かった。 学術論文での成果公表として、現在、単層CNTバンドルN2吸着サイトの解明(interstitial channelへのN2吸着を実験的に解明)について投稿中である。また、種々カーボン材料のN2吸着、CNT膜構造解析に関する論文を執筆しており学会発表を予定している。
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