研究課題/領域番号 |
18K04902
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
井原 章之 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 研究員 (10619860)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 強度相関計測 / コロイド量子ドット / 半導体ナノ粒子 / 単一光子光源 / タイムゲート / カスケード発光 / 発光量子効率 / 光吸収断面積 |
研究実績の概要 |
ナノ発光材料などの光源から放出される光子の強度相関を計測する手法は、光子が単一光子状態になっていることを示すために活用されてきた。しかし、一般的に使われてきた従来の強度相関法で得られる情報は少なく、計測した単一光子光源の性能が低い場合に、その原因を強度相関のデータだけから特定することは難しかった。本研究では、従来の強度相関法よりも多くの情報の抽出が可能になる測定法(タイムゲート強度相関法)の開発を進めた。
長い寿命の材料において、強度相関信号のセンター・サイドピークが近接する場合、カスケード発光(2光子が連続して放出される過程)の成分の大きさを決定することは難しかった。本研究では、カスケード発光成分の大きさを、センター・サイドピークが近接する条件下で決定するための技術を開発した。長い発光寿命をもつ量子ドットを用いて、時間原点におけるカスケード発光成分の大きさや、サイドピークのテール・背景光の影響を分離できるか調べた。得られた知見を元に、計測・解析法を改良し、寿命の異なる多くの材料に利用できるようにタイムゲート強度相関法の汎用性を向上させた。
単一光子光源の性能を分析する上で、カスケード発光に関する情報を得ることは重要であるが、強度相関信号だけでは抽出できる情報が限定的であった。本研究では、強度相関信号を発光減衰曲線と合わせて分析する技術を導入し、カスケード発光に関する多くの情報を抽出できるか評価した。材質・サイズの異なる単一ドットや、特異的な周辺環境下にある単一ドットを作成し、カスケード発光成分の大きさや、カスケード発光の輻射レートの特徴を調べた。得られた知見を元に、タイムゲート強度相関信号を発光減衰曲線と合わせて分析することで、多くの価値ある情報を抽出できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通りに、従来の強度相関法よりも多くの情報の抽出が可能になるタイムゲート強度相関法の開発を進めることができた。寿命の異なる多くの材料に利用できるようにタイムゲート強度相関法の汎用性を向上させることにも成功した。タイムゲート強度相関信号を発光減衰曲線と合わせて分析することで、多くの価値ある情報を抽出できることを示すことができた。また、高感度カメラで得られる発光イメージ画像のデータをリアルタイムに解析するプログラムの開発に着手した。発光イメージ画像のパターンマッチングを利用し、計測するドットを選択することにより、多数の単一ドットに対する自動的な分光分析を効率よく実施できることを示唆する知見も得られた。これらの点を考慮し、おおむね順調に研究が進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ発光材料の吸収断面積や発光量子収率は、その材料の性能を決定する重要な物理量であるが、その値を絶対計測することは簡単ではない。今後の研究では、初年度に実施した実験によって得られた知見に基づき、光吸収断面積や発光量子収率といった物理量を、材質・サイズの異なる単一ドットや、特異的な周辺環境下にある単一ドットを対象として絶対計測することができるか調べる。これらの実験を通して、従来の強度相関法よりも多くの情報の抽出が可能になるタイムゲート強度相関法の開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に新たに調達した高感度sCMOSカメラを制御するためのプログラムを構築する際に、予定よりも長い時間がかかってしまった。プログラムの動作チェックは初年度中に完了したため、その後の研究は計画通りに進められる状況である。初年度中に使用する予定であった物品費・旅費・その他の経費は、本年度の早い段階で速やかに使用する計画である。
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