研究課題/領域番号 |
18K04903
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
御田村 紘志 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (90437054)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 相分離 / シルセスキオキサン / 光反応 / リアルタイムIR |
研究実績の概要 |
昨年度までに、光架橋性シルセスキオキサンの光反応性をリアルタイムFT-IRによって調査し、シルセスキオキサン(SQ)分子内の官能基が光反応性(反応速度、転化率)に大きく影響を与えることを明らかにした。具体的には、SQ分子に光架橋性官能基であるメタクリル基とともにフェニル基を含む官能基を導入することで光反応性が向上することを示した。今年度は、この光架橋性SQとノボラック樹脂の混合系に紫外光(UV)を照射し、その後、アルカリ性のエッチング液でノボラック樹脂を溶出させることで、微細なナノ孔を有する構造体を作製することに成功した。しかし、このナノ構造体は光硬化時の諸条件(化学組成やUV照度、温度など)に非常に敏感であり、再現性の確保が問題となった。SQの安定的なナノ構造形成には、SQの光反応性が大きくかかわっていると考え、SQ分子内官能基の影響 のほかに、SQ分子量や光照射時の温度、雰囲気(大気下あるいは窒素下)の影響をリアルタイムFT-IRによって評価した。 まずSQ分子内の官能基については、メタクリル基とアルキル基(ここではイソブチル基およびヘキシル基)を共重合したSQ(比率は1:1)を合成し光反応性の評価を行った。その結果、アルキル基を導入したSQアルキル基を導入しないものに比べて、光反応性が低くなることが分かった。また、同じ組成のSQにおいて、SQ分子の分子量が大きいほど光反応性が抑制されることが分かった。さらに、光照射時の試料温度については、温度が高いほど光反応性が向上することが分かった。光照射時の雰囲気については、SQの化学組成によって影響は異なり、メタクリル基のみを有するSQやアルキル差を導入したSQにおいては窒素下で反応速度の向上が見られたが、フェニル基を有するSQに関しては大気下と窒素下で顕著な差は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、高分子材料であるシルセスキオキサンのナノ構造化(ナノ孔の導入)には成功している。ただし、再現性の確保にまだ課題があるため、今年度得られた知見をもとに引き続き、安定的にナノ構造を与える条件の模索を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた知見(光架橋性SQの光反応性に影響を及ぼす因子)をもとに、安定的にナノ構造を形成できる条件を見出すとともに、ナノ構造の構造制御因子について検討する。ナノ構造の形成には、SQの光反応性(反応速度や転化率)が大きくかかわっているであろうとの仮説の元に、種々の光架橋条件にてナノ構造の形成を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
光架橋性SQのナノ構造形成に関する実験が当初計画より時間を要したため、次年度も引き続き、安定した作製条件を検討するために次年度使用額が生じた。 次年度使用額は光反応の波長依存性を調査するために、光学フィルターの購入に充てる予定である。
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