研究実績の概要 |
本研究の目的は採血検査の代替法となる汗成分を指標とした体調管理用ウェアラブル非標識免疫センサの創出である。測定対象はモデルタンパク質IgGとメンタルストレスホルモンのコルチゾールとした。課題は、①いつでも汗を採取可能にする技術の確立と②ナノ多孔質体を用いた極低濃度汗成分の高感度検出法の確立である。①は皮膚にリン酸緩衝液(PBS)を接触させる新規汗成分採取法を世界で初めて確立した。②は①の手法で汗中コルチゾールを定量した結果、当初想定していた非標識トランジスタ型センサの検出限界の1/10以下と分かった。またナノ多孔質体には強制的物質供給機構が必要と実験で分かりウェアラブル化困難と判断した。 今年度は急遽標識法の採用と、大孔径多孔質体への抗体固定化も併せて検討した。具体的には、多孔質紙基板を用いた電位差計測型(トランジスタへ接続可能)免疫センサを新たに作製した。5mmx20mmの紙先端部に抗体を固定化し、それに隣接して電極対パターンを形成した。抗体固定部にPBSを含侵して皮膚に貼付し、汗中IgGを採取・捕捉した。剥離後、酵素標識2次抗体、及び標識酵素に酸化されるテトラメチルビンジジン(TMB)溶液に順次浸漬した。最後にTMBの酸化体/還元体比に応じ電極間に生じる電位差を計測した。結果、汗中IgG濃度の定量に成功した(約250 ng/mL, N=1)。上記単純工程で原理的にはコルチゾールも検出可能である。以上より汗成分用免疫センサの基盤技術を確立できた。基盤C終了後も継続して被験者試験を進め性能と簡便さを改良する。 今年度の成果は論文2報(Analytical Bioanalytical Chemistry誌と電気化学誌)、招待講演は国際会議1件(PRiME2020)、国内学会3件(第30回日本MRS年次大会、第69回高分子討論会、第47回日本毒性学会学術年会)である。
|