本研究では,現代医学で未解明なる領域とされている末梢気道での呼気吸気メカニズムの解明を目指し,末梢気道での呼吸を定量的に計測評価できる「局所的肺機能計測システム」の実現を目指す.前年度までに医療用ツールとのタンデム実装が可能な外壁実装型流量センサ,圧力センサプローブの2種類を作製し,それらを用いて流量及び圧力の計測が可能となっていたが,気管支流体抵抗の計測に必要な呼吸流量と圧力をそれぞれのプローブで個別に計測する必要があった.本年度は,これらの同時計測が可能なセンサプローブの開発を中心に以下の研究課題に取り組んだ. ①流量と圧力の同時計測が可能なセンサプローブの開発:昨年度開発した圧力センサプローブを改良し,同プローブ上に直接搭載可能な流量センサを開発した.具体的には,銅張積層板(銅箔35μm,ポリイミド50μm)を基板として,絶縁層を介して金属ヒータからなる流量計測素子を作り込んだ平板型流量センサを作製した.更にそれを圧力プローブ上に貼り付けることで一体化した.開発したセンサは,0-6L/sの流量範囲での計測および112msの応答性能を有し,ヒトの呼吸計測に十分な性能を有した.更に模擬肺として人工呼吸器を使用し,作製したセンサの流量圧力計測機能を評価した結果,往復流である流量変化に同期して圧力変化が計測でき,得られた圧力損失(2点間での圧力差)が理論値と一致する事を確認した. ②各種センサとの集積化が可能なプラットフォーム基板の開発:①の流量センサで使用した銅張積層板基板を種々のセンサ実装のためのプラットフォームとして使用することを考えている.今年度は同基板上に2つのMEMS圧力センサを搭載した圧力センサプローブを作製した.これにより気道内2点間の圧力差が計測可能となり,気道内流体抵抗の計測に必要な圧力損失と流量を1つのデバイスで計測可能なセンサを実現できる見通しを得た.
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