研究課題/領域番号 |
18K04920
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
内藤 智之 岩手大学, 理工学部, 准教授 (40311683)
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研究分担者 |
藤代 博之 岩手大学, 理工学部, 教授 (90199315)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超伝導バルク磁石 |
研究実績の概要 |
本研究では,7テスラ級磁場を発生させるMgB2超伝導バルク磁石を開発し小型MRI用の磁場発生源として利用することを目的としている。作製条件を詰めることでマウスが入る程度のボア径を有する外径60mm,内径40mmおよび厚さ20mmのMgB2リングバルクの作製に成功した。また,リング中空領域の磁場均一度を測定するために磁場分布装置を新たに立ち上げた。作製した複数個のMgB2リングバルクについてフル着磁させたときの磁場分布を評価したところ,同条件で作製したにもかかわらず磁場分布の均一性が異なることが分かった。また,特性の異なるバルクを2個積層させた疑似的に厚さ40mmのバルクでは単独の場合に比べて磁場分布の非対称性が顕著となった。これはバルクに生じた温度勾配が悪影響を及ぼしていると考えられ,均一磁場の発生には積層型は好ましくないことが明らかとなった。MRI実験の前段階として大型MgB2リングバルク磁石が発生する磁場によるNMR(核磁気共鳴)信号の検出実験を行った。磁場強度に優先して広い均一磁場を得るために0.47テスラ(共鳴周波数20MHzに相当)の磁場を部分着磁したMgB2バルク磁石を用意し,この磁場下において自製NMRプローブによりシリコンゴム試料から水素(1H)のNMRスペクトルの検出することに成功した。また,スペクトルの場所依存性から約20mm直径球内に均一磁場があることが分かった。一方,発生磁場強度の向上については積層したTiドープMgB2ディスクバルク間の中心部分において11Kで約5.6テスラを得た。これは現時点での世界記録となる(これまでの世界記録は5.4テスラ)。また,磁束ジャンプにより最終的な磁場の捕捉には至らなかったが,この積層型ディスクバルクを4.2Kに冷却することで7テスラの磁場を捕捉できる可能性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で立てている3つの目標のうち,今年度は大口径のリング型MgB2バルク磁石の作製およびその磁場均一度を明らかに出来たこと,MgB2バルク磁石の発生磁場下で水素(1H)のNMR信号が検出できたこと,TiドープしたMgB2バルクで世界記録となる5.6テスラの磁場を捕捉でき,また,7テスラ級磁場の捕捉も視野に入ってきたことから上記の判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
装置開発に向けては,今年度NMR信号の検出に成功したことから最終年度となる令和2年度はMgB2リングバルク磁石の磁場下でMRI画像の撮像を目指す。NMR信号およびMRI画像の分解能を向上させるためにはMgB2バルク磁石の強磁場化が必要であることから,引き続き大型バルクの作製条件の最適化,それに加えて不純物ドープによる磁束ピン止め能力の強化を行う。また,強磁場着磁には低温での着磁が必要である。そこでは磁束ジャンプによる着磁の失敗をなくすべく磁性材料の添加等によるMgB2バルクの熱的安定性の向上を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:新型コロナウィルスにより年度末に予定していた出張が学会の開催中止により取りやめになったことや理研での実験期間を短縮せざるを得なかったことが主な理由である。
使用計画:理研で実施するNMR・MRI実験や学会における成果発表の旅費として使用する予定である。
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