研究課題
昨年度まで,固相反応法により合成したCuMoO4を用いて,元素置換や流星ボールミルによる粒径制御を試みてきた。特に,流星ボールミルの使用では,予想以上の外部圧力の影響により本来の結晶構造とは異なる(高圧)相への構造変化が判明した。今年度は,固相反応法から液相法である共沈法やゾル-ゲル法により,CuMoO4の微細な粉末試料を合成し粒径制御を試みた。特に,ゾル-ゲル法により合成した前駆体の焼成条件を制御することにより,結晶子サイズを約100ナノメートルから1マイクロメートルへ制御できることが明らかとなった。また,従来の電気炉などの外部加熱に加えて,内部加熱を誘発するマイクロ波照射を実施することにより,100ナノメートル以下の結晶子を有する粉末試料の合成も可能であることが判明した。粒径の異なる粉末試料の極端条件下,特にパルス磁場を用いた精密直測定を実施した。その結果,粒径サイズの違いにより,磁性相の存在比率が異なることを示唆する磁化過程が観測した。本研究期間において,単結晶を用いた構造変化に伴う自発的な結晶粉砕によって生成された粒径サイズに起因する磁気的性質の実験的観測を発端とし,磁性イオンから非磁性イオン,イオン半径の異なる同族イオンへの元素置換による人為的な粒径制御を実施した。その結果,単結晶試料の自発的な粒径制御を人為的な元素置換により粉末試料を用いて再現することに成功した。また,粒径制御のサイズ幅の拡大を目的とし,流星ボールミルを用いたトップダウンによる制御ではなく,ゾル-ゲル法による生成した前駆体からのボトムアップによる制御を実現した。さらに,内部加熱を誘発するマイクロ波照射の可能性を確認することができ,今後の新たな展開を期待できる成果を得ることができた。
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