研究課題
本研究では、当初計画に基づいて主に次の成果が得られた。(1) 2次元精密ラビング装置の開発:1次元ラビング装置での知見をもとに、掃引パターニングをプログラマブルに制御可能なXY自動ステージと、ラビング温度を制御するためのPID制御のカートリッジヒーターを導入し、2次元精密ラビング装置を開発した。これを用いて、円など2次元的に分子配向したチエノキノイド薄膜を得た。(2) 冷間等方圧加圧(CIP)による移動度増大:チエノキノイド薄膜をラビングして分子配列をEdge-onからFace-onに変換した場合には、その後にCIPすることで、異方性は変わらないまま移動度を向上させることができた。このとき、新たに開発した移動度の異方性評価用電極パターニングマスクを用いた。X線回折の測定から、Face-on配列の場合にはCIPによりπ-πスタッキングがわずかに密になるとともに規則性が向上することが分かった。特に最終年度では、量子化学計算でπ-πスタッキング変化に伴う2分子間のトランスファー積分の変化を計算し、そこから移動度変化を見積もったところ、CIPによる分子パッキング変化が移動度増大の要因であることが明らかになった。(3) ラビング装置の応用 -分子配向した近赤外吸収J 会合体薄膜-:(1)で開発したラビング装置で簡便に分子配向膜を得られるようになったため、テフロン配向膜の作製に応用した。テフロン配向膜上でのある種のアゾ色素分子の蒸着条件を検討したところ、非常に大きく長波長シフトした(近赤外領域)吸収ピークを有するJ会合体分子配向薄膜が得られた。これほどの大きいシフトは珍しい大変興味深い現象であった。特に最終年度では、別途開発した近赤外対応の高解像度偏光顕微鏡で薄膜を観察し、観察画像とコンピューターによるスペクトル解析により、近赤外吸収J会合体が局所的に分布していることを明らかにした。
すべて 2022 2021
すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)