研究課題/領域番号 |
18K04932
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平永 良臣 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (70436161)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プローブ顕微鏡 / 走査型非線形誘電率顕微鏡 / 誘電体 / 誘電率イメージング / 半導体 / キャリア分布イメージング |
研究実績の概要 |
本研究課題では,∂C/∂z-SNDM法の基礎を構築し,ナノスケール空間分解能で線形誘電率の分布の可視化,および絶対値計測が可能となる技術の確立を行うことを目的として,研究を遂行している.2021年度は∂C/∂z-SNDM法における線形誘電率の定量計測の方法の確立,表面形状アーティファクト補正方法の開発,高分解能化,および,多様な測定対象への展開に関する研究を継続して行った.また,これに加え,派生的な研究成果として,同じSNDMをベースとする強誘電体に関する新たな微視的評価手法である,局所C-Vマッピング法を新たに開発した.同手法は,SNDMを計測プローブとし,強誘電体サンプルに大振幅交流バイアス電圧を印加した際に生じる静電容量変化を高感度に検出し,これを空間的にマッピングする計測手法である.得られた静電容量応答はバタフライカーブという,強誘電体特有のカーブを描く.これを詳細に解析することによって,強誘電体の分極反転挙動(ドメインダイナミクス)をナノスケールの空間分解能で実空間において可視化することができる.本手法を用いて強誘電体薄膜,具体的にはHfO2基強誘電体薄膜のドメインダイナミクス分布の評価に適用可能であることを示した.さらに,得られたデータセットから特徴量を抽出することによって,正味の反転可能分極量や抗電界の空間分布,および局所的なインプリント(P-Eヒステリシスカーブの電界方向のシフト)の実空間分布を可視化できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【線形誘電率の定量計測の確立】シミュレーションで得られる校正曲線ならびに基準試料を用いて,∂C/∂z-SNDM信号強度を誘電率に換算することが可能であることを明らかにしており,当初の目標はおおむね達成したと言える. 【表面形状アーティファクトの補正方法の開発】実験結果と信号強度のシミュレーション結果を比較することで,得られた信号強度が真の誘電率分布によるものなのか,アーティファクトによるところが大きいのかを,ある程度判定できるようになりつつある. 【測定条件の最適化と吸着水の除去,ならびに高調波信号検出法による高分解能化】 高調波信号検出法による高分解能化は実証できたので,一定の成果は得られたと言える.吸着水の除去の効果については未だ実施できておらず,延長期間中に実施したい. 【多様な測定対象への展開】コンデンサ応用など工学的に重要なチタン酸バリウム系セラミックスへの適用可能性を実証できたことから,本手法の多様な測定対象への展開の可能性の一端を示すことができた.また,誘電体のみならず半導体デバイスへの適用可能であることも実証できた.
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今後の研究の推進方策 |
【線形誘電率の定量計測の確立】はおおむね目標を達成しており,次の当面の最重要課題は【表面形状アーティファクトの補正方法の開発】である.これまでの進捗では,実験結果によって信号強度変化が真の誘電率変化によるものなのか,表面形状変化によるものなのかをある程度判定できるようになってきた.延長期間中には表面形状の寄与を定量的に補正できるところまで推し進めたい. もう一つの重要課題は【さらなる高分解能化】である.未検証項目である吸着水除去の効果や極細導電性探針の導入について検討する. 【多様な測定対象への展開】についても,引き続き適用範囲の拡充を探求してゆきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究課題では研究遂行において計測時に必要なカンチレバーを消耗品として使用する必要があり,その調達経費を予算として計上している.一方で,当該研究課題は補助事業期間延長申請をしており,これが認められている.次年度も引き続き研究を遂行するにあたり,必要なタイミングで適切なカンチレバーを適切な量調達するために,次年度使用額が生じたものである.
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