本研究課題では,∂C/∂z-SNDM法の基礎を構築し,ナノスケール空間分解能で線形誘電率の分布の可視化,および絶対値計測が可能となる技術の確立を行うことを目的として,研究を遂行している.2022年度は∂C/∂z-SNDM法における線形誘電率の定量計測の方法の確立,表面形状アーティファクト補正方法の開発,高分解能化,および,多様な測定対象への展開に関する研究を継続して行った.また,これに加え,派生的な研究成果として,同じSNDMをベースとする強誘電体に関する新たな微視的評価手法である,局所C-Vマッピング法開発も,前年度に引き続き遂行した.2022年度は特に同計測法において得られる膨大なデータサイズのハイパースペクトラルイメージデータを機械学習的アプローチによって多角的に分析する手法の開発を行った.このようなアプローチによって,さまざまな分極反転挙動を示す領域が実空間上でどのように分布しているかを視覚的に捉えることが可能となった.このようなアプローチは局所C-Vマッピング法に限らず∂C/∂z-SNDM法を含むSNDMベースの分析手法全般にも適用可能である.加えて,このような機械学習的アプローチは複数の計測を組み合わせるマルチモーダル分析において極めて有効な方法であり,従来型SNDM観察,∂C/∂z-SNDM法,局所C-Vマッピング法を組み合わせたマルチモーダル分析,さらには他のSPMベース分析手法を統合した測定の分析手法として発展が見込まれる.
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