研究課題
本研究では、熱電変換素子の適応範囲を広げるため、既存材料とは異なる利用価値のある材料に対して基礎的な物性の評価や実デバイス応用に向けた動作実証の検証を目的としている。特に、研究報告の少ないガラスのようなアモルファス酸化物材料に着目し、アモルファス酸化物半導体熱電素子実現に必要な材料やプロセスを開発し、熱電応用に対するポテンシャルを検証する。初年度は、InGaZnO薄膜に対して、成膜条件、組成比、結晶性をそれぞれ変化させ、膜の物性を評価した。まず、スパッタによって成膜する際の、RF電力・ターゲット距離・圧力に対して熱電特性の変化を評価した結果、熱電特性は成膜圧力に対して大きく変化する傾向を示した。ホール移動度及びキャリア密度、ゼーベック係数の温度依存性を評価し、パーコレーションモデルによる理論解析を実施した。最適な成膜圧力を選択することで、膜中欠陥によるポテンシャル障壁が下がり、移動度の向上と温度依存性が大きく変化したことが要因であると示唆された。また、組成比In:Ga:Zn~2:2:1のInGaZnO膜に対し、Inをリッチにした2:1:1のターゲットを用いて成膜した結果、それぞれの移動度は約12.9 cm2/Vs、26.5 cm2/Vsであり、熱電性能も移動度の増加に伴い増加することが明らかとなった。さらに、アモルファス状態と微結晶状態のInGaZnO膜に対して、熱電特性を評価した結果、アモルファス膜の方が窒素雰囲気中のアニールによるキャリア密度制御が容易であった。一方、微結晶膜は水素アニールにより熱電特性が大きく向上することが明らかとなった。また、実用化に向けたデバイスの試作を実施した。PEN基板上での薄膜型熱電素子の構造の最適化をおこない、InGaZnO膜及びMo電極を利用したUni-leg型の薄膜熱電素子を提案し動作実証に成功した。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、アモルファス酸化物半導体の熱電素子実現に必要な材料やプロセスを開発し、熱電応用を検証している。アモルファスInGaZnO薄膜の熱電性能が成膜条件や組成で制御可能であることが明らかとなり、計画通りに進んでいる。また、薄膜の熱電デバイス応用に向けた素子構造を提案し、フレキシブル基板上で動作実証しており、応用に向けた実験についても順調に進んでいる。
アモルファス酸化物半導体の熱電特性向上のためInGaZnOとは異なる元素を用いたアモルファス酸化物半導体薄膜について評価を進める。さらに界面制御による特性の改善も実施する。薄膜型熱電デバイスの試作においては、放熱を考慮した素子設計や電力密度向上に向け取り組む。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Journal of Physics: Conference Series
巻: 1052 ページ: 012011~012011
10.1088/1742-6596/1052/1/012011
巻: 1052 ページ: 012016~012016
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Journal of Electronic Materials
巻: 48 ページ: 1971~1975
10.1007/s11664-018-06854-4
http://mswebs.naist.jp/LABs/uraoka/PUBLIC/top/top.html