研究課題/領域番号 |
18K04944
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
赤池 幸紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (90581695)
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研究分担者 |
若山 裕 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 副拠点長 (00354332)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機ヘテロ界面 / 界面構造 / 和周波発生分光 |
研究実績の概要 |
2019年度は、赤外-紫外和周波発生分光(SFG)を用い、有機ヘテロ接合の構造分析を行った。SFGは、反転対称性の崩れた表面や界面の振動分光を選択的に行える。また、偏光の組み合わせを変えることで、分子配向の情報も得られる。そのため、界面混合並びに構造無秩序化が生じるかどうかを確かめることができるはずである。具体的な研究対象としては、有機太陽電池の光電変換界面である、ドナー/アクセプター界面を選んだ。具体的には、ガラス基板に作製したC60薄膜と、オリゴチオフェンを乗せたヘテロ接合のSFG測定を行った。偏光組み合わせがSSPのSFGスペクトルの解析から、ヘテロ界面形成後に、C60のAgモードが著しく強調されることが分かった。同様の傾向が、オリゴフェニレンを積層した場合でも見られた。C60孤立分子と、C60/チオフェン錯体のDFT計算から得られた超分極率の違いから、基底状態で生じる界面電子移動によってAgモードが強調されることが示唆された。一方、同様の傾向がC60自己組織化膜でも既報文献で観測されていることと、C60/アルカン界面のSFGスペクトルでも、Agモードの強調が多少見られた。このことから、有機ヘテロ界面を形成すると、上層の分子の存在によりC60の自由回転が抑制され、配向が揃うことも示唆された。この結果は、フラーレン誘導体であるPCBMとオリゴチオフェンで見られたAgモード増大とも対応する。なお、結晶化したPCBMは薄膜表面に側鎖が露出するため、オリゴチオフェンを積層した際には、Agモードの信号が強調される程度が抑えられていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SFGを用いた分析を始めることで、当初予定していたXRD測定よりも、より直接的に有機ヘテロ界面の構造に関する情報を得られるようになったことは大きな進展である。また、上層分子の種類を様々に変えることで界面電子移動の有無やC60の自由回転抑制に関する推察ができた。これらの新しい知見が得られたことは大きく、研究が順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ヘテロ界面形成によるドナー分子の配向変化を精査する。偏光の組み合わせを変えたSFG測定を実施し、振動モードの強度比から、分子配向の情報を得る。また、界面電子移動の影響をさらに精査する。DFT計算を併用し、正電荷が形成された際の超分極率の変化を確かめる。また、基板をガラスではなく、IZOなどの電極に変更し、ヘテロ界面における接触ドーピングの基板仕事関数依存性を実証する。さらに、蒸着順序を逆にしたヘテロ接合のSFG測定を行い、界面構造の違いが出るかどうかを調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該価格に見合う消耗品を購入するよりは、翌年度に持ち越し、より大きな価格の物品購入に充てることにした。具体的には、金属基板や試薬の購入に充てる。
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